医療と福祉が出会う場所をめざして―元北九州市総合療育センター副所長・河野医師と訪れたNPO法人さんぽ見学記
2月9日に北九州市のNPO法人さんぽを河野先生と訪問し、医療と福祉の連携について意見交換を行いました。今回の見学は、単なる施設紹介にとどまらず、地域で支援を必要とする方々にとってより良い環境をつくるための大切な一歩になったと感じています。本記事では、当日の見学内容や懇談での学び、そしてさんぽが地域で果たしている役割について記すとともに、地域に向けた情報発信の観点からも整理しています。 さんぽが大切にしている理念と地域での存在感 https://sannpo-yahatahigasi.jimdofree.com/ さんぽは、生活介護、放課後等デイサービス、居宅介護、行動援護、移動支援、重度訪問介護、グループホームなど、多岐にわたる事業を展開している法人です。「寄り添い」「信頼」「協調・協働」を大切にし、利用者一人ひとりの幸福を追求する姿勢が一貫しています。 代表の高村壮士氏は「ポジティブ行動支援北九州」の代表も務め、地域の強度行動障害支援者の育成にも力を注いでいます。現場の支援だけでなく、地域全体の支援力を高める取り組みを続けていることは、北


北九州市保育マイスター認定式の直後に開催された保育士研修
子どもの行動を理解し、支援につなげるために必要な視点とは 2月3日、北九州市役所3階の大集会室では、全国初の北九州市保育マイスター認定式 https://www.youtube.com/watch?v=l-lXw7skfuw に続いて、保育士向けの研修会が開催されました。 認定式の熱気が残る会場に、現場で日々子どもたちと向き合う保育士の皆さんが集まり、真剣な表情で席に着かれていました。 今回の研修は、これまで10年以上にわたり市の直営保育所を対象に行われてきたものですが、令和7年度に初めて 民間保育所も参加対象に加わった という大きな節目の年でした。 募集開始からわずか1日で定員に達し、保育現場でのニーズの高さを改めて実感しました。 さらに驚いたのは、参加者全員が事前課題として配布した ABAの行動分析シートを提出してくださったこと です。 どのシートも丁寧に書かれており、子どもを理解しようとする姿勢が伝わってきました。 このような質の高い研修は、これからの就学前支援に大きな力になると感じています。 子どもの行動には必ず理由があります 保育現場で
強度行動障害の支援は「行動の意味」を理解することから始まります
八女地区すいれん研修会でお伝えした“支援者が前向きになるABAの視点” 強度行動障害のある方への支援は、日々の現場で最も負担が大きく、支援者の心身をすり減らしやすい領域です。 「どうしてこんな行動をするのか分からない」「何をしても改善しない」「家庭や施設が疲弊してしまう」 こうした声は、私がコンサルテーションで伺う現場でも常に聞かれています。 今回、八女地区障害者地域生活支援拠点センターすいれん主催の研修会で、強度行動障害のある方の行動問題をどのように理解し、どのように支援につなげていくかについてお話ししました。 この記事では、その内容を整理し、支援者の方々が明日からの支援に活かせる視点をまとめていきます。 強度行動障害は「個人の問題」ではなく「環境との相互作用」で理解します 強度行動障害は、自傷・他害・物壊し・パニックなど、通常では考えられない頻度で行動問題が生じ、対応が難しい状態を指します。 しかし、ABA(応用行動分析)の視点では、これらの行動は“その人の性格や心の弱さ”ではなく、 環境との相互作用の中で生じている と考えます。...
熊本セミナー報告:自立学習課題づくりの実践と工夫
2026年1月25日(日)、熊本市東区のエンゼル保育園にて開催された「発達障がいの子どもに役立つ自立学習課題の作り方」セミナーは、実践的でありながら温かみのある学びの場となりました。受講者は、児童発達支援、幼稚園、放課後等デイサービス、知的障害者生活介護事業所の職員の方々です。 エンゼル保育園は、保育所・児童発達支援・高齢者デイケアが併設された複合施設で、日頃から子どもと高齢者の交流が行われています。今回は会場をお借りしただけでなく、教材作りに必要な材料や道具までご提供いただきました。心より感謝申し上げます。 講師は私が務めました。30年以上にわたり発達支援に携わってきた経験をもとに、TEACCHプログラムとABAの理論と実践を融合させた内容をお伝えしました。 午前の部:理論とアセスメントの理解 午前中は、自立課題の基本的な考え方と、教材作成に向けたアセスメント方法について、レジメに沿って丁寧に解説しました。 自立課題とは、TEACCHプログラムに基づき、ASDの子どもができるだけ人の手を借りずに、自分のペースで学習や作業を進められるよう工夫
2025年度 認定社会福祉士認証研修(障害分野)ABA研修を担当して感じたこと ― 発達障がい支援の“実践知”を全国へ
はじめに ― 全国から集まった27名との学びの場 2026年1月10日、公益社団法人福岡県社会福祉士会が主催する「認定社会福祉士認証研修(障害分野)」において、発達障がい支援と応用行動分析(ABA)をテーマに講義を担当させていただきました。今回の研修はオンライン開催でありながら、全国各地から27名の社会福祉士が参加されました。対象者の年齢も幼児から成人まで幅広く、参加者の職種も相談支援専門員、施設職員、学校現場の教員、行政職員、医療機関のスタッフなど多岐にわたっていました。 画面越しであっても、参加者の皆さんからのチャットを通じた積極的な質問から、発達障がい支援に対する強い関心と、現場での課題意識の高さが伝わってきました。オンラインでありながら、皆さん顔出しでの参加で、私自身も講師として非常に刺激を受ける時間となりました。 今回の研修は、発達障害者支援法と発達障がいの基礎理解から始まり、ABAの理論と実践、そして環境調整や行動支援の具体的な方法へと進む、終日をかけた濃密なプログラムでした。参加者の皆さんが抱える現場の課題に寄り添いながら、支援の根


ASDのある子どもの特性を理解し、専門性を高めよう~合理的配慮と強度行動障がいへの対応~ だれひとりとりのこさない
2026年1月8日、北九州市立小倉南特別支援学校にて開催された研修会は、教育と福祉の垣根を越えた画期的な取り組みとして、多くの関係者の関心を集めました。年始の慌ただしい時期にもかかわらず、会場には小倉南支援学校の教員約100名に加え、北九州市内の支援学校、支援級、通級指導教室の教員、校長、教育委員会の指導主事など、総勢190名以上が参加。強度行動障害への対応に対する教育界の高い関心を象徴する場となりました。 第1部:安川氏による1年間のコンサルテーション成果報告 研修の第1部では、自閉症(ASD)支援特化型事業所sTackの管理者であり、北九州市立小倉南特別支援学校のコンサルタントでもある安川氏が、動画を交えて1年間にわたるコンサルテーションの成果を報告しました。安川氏は、学校現場における強度行動障害の予防と改善を目的に、児童生徒一人ひとりの特性に応じた支援の在り方を丁寧に構築。小・中・高等部の複数の生徒が安心して学校生活を送れるようになった事例が紹介され、参加者の共感を呼びました。 また、強度行動障害に関する制度の説明の中で、安川氏が来場者に「
ABAに基づく表出コミュニケーション支援:現場でよくある質問とやり取りから学ぶポイント
先日、北九州市の児童発達支援センターで研修を行いました。研修の中で、職員の皆さんと実際に交わしたやり取りをもとに、絵カードを使ったコミュニケーション支援の考え方をまとめました。現場のリアルな疑問を通して、支援の意図や工夫がより伝わりやすくなると思います。 ■ 絵カードバインダーはどこに置くのが良い? 職員 :「バインダーはどこに置くのが良いですか。置き場所は決めたほうがいいのでしょうか」 私 :「今はどこに置いていますか」 職員 :「机の上に置いています」 私 :「ずっと机の上ですか。別の場面では片付けたりしていませんか」 職員 :「使わないときはロッカーにかけています」 ここで私は次のようにお伝えしました。 私 :「職員が机に置いてあげていると、子どもは“机にあるときだけ使う”と学習してしまいます。コミュニケーションは、必要なときにいつでもできることが大切です。ですから、子ども自身がロッカーから取りに行き、必要な場所に持ってくる経験も学習の一部になります。ホールや園庭など移動先にも置き場所を用意し、どこでも使える環境を整えていきましょう」 ■.
民主主義の「スピードの遅さ」をどう改善するか― 式年遷宮モデル × ABA的実験修正主義 × 制度デザイン ―
1. 民主主義が遅くなる構造的理由 民主主義国家が政策変更に時間がかかるのは、単なる「怠慢」ではなく、制度の構造による。 利害調整に時間がかかる (多様なステークホルダー) 官僚制が慣習化しやすい (前例踏襲) 一度決めた制度が“固定化”される (制度疲労) 失敗を認めにくい文化 (責任追及型の政治文化) 「一度決めたら変えられない」という問題は、民主主義の“制度硬直性”の核心。 2. 提案:式年遷宮 × ABA的実験修正主義 制度を「定期的に更新するもの」と捉えることで、硬直性を防ぐ。 (1)式年遷宮モデル:制度の“定期的リニューアル” 20年ごとに建て替える伊勢神宮のように 制度も定期的に見直すことを義務化する 「変えること」が前提になるため、官僚制の惰性を防ぐ (2)ABA的「実験的修正主義」 ABAの原則 計画 → 実行 → 測定 → 修正 を政策に組み込む。 つまり、 うまくいかなければ修正する データに基づいて改善する 失敗は“改善のための情報”と捉える という文化を制度として保証する。 これは民主主義の弱点を補う非常に合理的なアプ
発達障がい専門医の確保が難しい理由とその処方箋
先日、発達障がい専門のクリニックを開設したいと強く願っている障がい福祉事業をやっている理事長と一緒に、長年、北九州市総合療育センターで重責を担ってこられ、現在退職されている医師とで懇談の機会を持ちました。そこで、医師を確保すること自体が難しい時代になっていることをお伺いし、これはいけないと思った次第です。これは、国が制度的に改善しないといけないと思うと同時に、現状でできることを検討してみました。 ①大学病院の医師派遣の仕組みが変化している 昔は大学が地域に医師を派遣する「医局制度」が強く、地域の病院・施設に若手医師が来やすかった。 現在は研修医を外に出せない(研修プログラムの制約)、大学病院自体が人手不足 などにより、外部への派遣が大幅に減少。結果として、非常勤医師の確保が難しくなっている。 ② 専門医制度の資格化・細分化による制約 小児科、精神科、児童精神科などの専門医制度が厳格化し、研修内容・研修場所が細かく規定されるようになった。 若手医師は資格取得のために決められた施設での研修を優先せざるを得ない。 そのため、自由に外部のクリニックで非


家族支援とスタッフ育成をつなぐ一枚──ペアレントトレーニングDVDのご紹介
子どもの「困った行動」に悩む保護者や支援者の皆さんへ。 その行動の裏には、子どもなりの理由やメッセージがあることをご存じですか? ABC研究所と子ども支援室みらいが共同制作した「ペアレントトレーニングDVD」は、応用行動分析(ABA)に基づき、子どもの行動の仕組みをわかりやすく解説。保護者支援にも、スタッフ育成にも活用できる、実践的な教材です。 DVDで学べる6つのコアエレメント このDVDでは、ペアレントトレーニングの基本となる6つの要素を、映像とワークを通じて学べます。 子どもの良いところを探してほめる 行動を観察し、3つに分類する 行動の仕組みを理解する 行動のメッセージを読み取る 達成しやすい指示を出す 困った行動を減らす工夫をする さらに、特典映像では「良い行動を増やすには?」「困った行動を減らすには?」といった実践的なヒントも収録。現場でのスキルアップや、保護者向け学習会の教材としても最適です。 活用方法:家族支援とスタッフ育成の両輪に 家族支援の場面では… DVD視聴(10〜15分) 子どもの様子の聞き取り 行動について意見交換 ワ














