研修レポート】福津みらい放デイ・児発向けABAシリーズ研修― 第7回「ルール支配行動と言語行動」実践編 ―
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福津市の放課後等デイサービス・児童発達支援「みらい」の職員の皆さまを対象に、今年度のABA(応用行動分析)シリーズ研修の第7回を実施しました。今回のテーマは、「言語行動の理解」と「ルール支配行動」。 言語やことばの不思議な働きをどう理解し、どう支援につなげるか。現場で必ず役立つ内容を、演習を交えながら深く学んでいただきました。
1. 言語行動の5分類を現場でどう使うか
スキナーの言語行動論では、言語行動を「話している内容」ではなく、“どのような機能で使われているか”で分類します。今回の研修では、前回の復習も兼ねて、以下の5つの言語行動を具体例とともに整理しました。
マンド(要求) 動機づけ操作を先行事象として生じる言語行動。 例:「あそぼう」「ジュースちょうだい」
タクト(命名・説明) 環境刺激を先行事象として生じる言語行動。 例:「飛行機だ」「赤い車が来た」
エコーイック(復唱) 聞き手の言語行動をそのまま模倣する。 例:「プゼレントじゃなくてプレゼントだよ」→「プレゼント」
イントラバーバル(会話) 言葉に対して言葉で返す。 例:「喧嘩したあとなんて言うの?」→「ごめんなさい」
オートクリティック(自己言及) 自分の言語行動に関する言語行動。 例:「今食べないと死ぬ」など、聞き手への影響を強める表現
これらは、単なる分類ではなく、支援の方向性を決める“分析の道具”です。
2. 読み書きの3つの言語行動
今回の研修では、読み書きに関わる3つの言語行動も扱いました。
● Dictation taking(書き取り)
大人の音声を聞いて、そのまま文字で書く行動。
● Copying(書き写し)
黒板やプリントの文字を見て、そのまま書く行動。
● Textual(読字行動)
文字を見て音読する行動。
これらは一見似ていますが、先行事象(刺激)が異なるため、教え方も異なります。 例えば、書き取りが苦手な子に「黒板を写す練習」をしても効果は薄い。 逆に、読字行動が弱い子に「音読の練習」だけをしても、文字の認識が育ちません。
研修では、実際の授業場面を想定しながら、 「どの言語行動を教えているのか?」 「どの刺激を手がかりにしているのか?」 を丁寧に分析しました。
3. 文章理解のステップ
文章理解は、次の順番で育ちます。
話し言葉の理解
音読(読めない字はエコーイックで教える)
黙読
文章理解
この順番を飛ばすと、子どもは“読んでいるふり”が上手になります。 特に、絵と文字が併記された教材では、絵を見てタクトしているだけなのか、文字を読んでいるのか(Textual)が分かりにくい。 そのため、研修では「文字だけで読めるかを確かめる」重要性を強調しました。
4. ルール支配行動とは何か
後半は、今回のメインテーマであるルール支配行動(Rule-governed behavior)を扱いました。
● ルール支配行動とは
人の言葉(ルール)を手がかりに行動が変わること。 例:朝は雨が降っていないけど「雨が降るから傘を持っていきなさい」と親が言う→子どもが傘を持って行く
● 随伴性形成行動とは
実際の経験(随伴性)によって行動が変わること。 例:雨が降ってきた→傘をさす→雨に濡れない
この2つは似ているようで、子どもの行動理解においては大きな違いがあります。
5. 効果のないルールとは?
研修では、「効果のないルール」についても取り上げました。
「ちゃんと片づけないと後で困るよ」 →おもちゃがなくなったり、壊れたりするなど結果が累積的で遅れて生じるため、子どもには伝わりにくい(塵も積もれば山となる)
「いつか怪我するよ」 →確率が低く、抽象的でイメージしにくい(天災は忘れた頃にやってくる)
発達障害のある子どもにとって、 “未来の結果を想像する”こと自体が難しい場合があります。 そのため、ルールを伝える際には、具体的で、すぐに結果が分かる形にする必要があります。
6. ルールの3分類:トラッキング・プライアンス・オーギュメンタル
Zettle & Hayes(1982)の枠組みをもとに、ルール支配行動を3つに分類して学びました。
● トラッキング(Tracking)
ルールと実際の結果が一致する。 例:「こうやるとうまく自転車に乗れるよ」→本当に乗れた
● プライアンス(Pliance)
大人の反応(ほめられる・叱られない)を手がかりに行動する。 例:「先生が喜ぶからやってみよう」「親に怒られるからやめよう」
● オーギュメンタル(Augmental)
ルールが“好ましさ”や“嫌悪性”の意味を変える。 例:「手を洗わないでご飯を食べるとお腹が痛くなるよ」
この3つを見極めることで、 「この子は結果を理解して動いているのか?」 「大人の反応を見て動いているのか?」 「意味づけが変わって行動しているのか?」 が分かり、支援の方向性が明確になります。
7. ルールがうまく働くための条件
研修では、ルールが機能するための3条件を整理しました。
効果的なルールであること(具体的・短期的・理解可能)
実際の結果とつながっていること(プライアンス→トラッキングへ)
信頼できる人から伝えられること
特に、発達障害のある子どもにとっては、 「大人の言葉が現実とつながる経験」が極めて重要です。
8. 演習:現場でのルールの例
研修では、実際の支援場面を想定しながら、ルールの例を挙げていただきました。
滑り台のやり方を説明したらうまく滑れた(トラッキング)
振り返りの時間にできたことをほめる(プライアンス)
お箸マンの動画を見てやる気が出た(オーギュメンタル)
「ハチが出るから近づかないで」→動画で危険性を理解
「シートベルトしないと車出ないよ」→結果がすぐ分かるルール
どれも現場で起こりうる具体的な例で、職員の皆さんの理解が深まっていました。
9. まとめ:言葉は“行動を変える道具”である
今回の研修の核心は、 「言葉は行動を変える強力なツールである」 ということです。
しかし、言葉が万能なわけではありません。 子どもがその言葉をどう受け取り、どう理解し、どう行動に結びつけるかは、 その子の発達段階・経験・関係性・環境によって大きく変わります。
ABAの視点で言語行動とルール支配行動を理解することで、 「なぜ伝わらないのか?」 「どう伝えれば行動が変わるのか?」 が見えるようになります。
みらいの職員の皆さまの熱心な姿勢のおかげで、今回も非常に充実した研修となりました。 次回は「関係フレーム学習」について扱います。 子どもたちの“理解の仕組み”をさらに深め、支援の質を高めていきましょう。













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