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**オンライン講演「ASD診断大国ニッポン」を聴いて考えたこと― 支援者として、そして一人の臨床家として ―**

  • 15 時間前
  • 読了時間: 6分

昨夜、令和8年3月5日、本田秀夫先生のオンライン講演「ASD診断大国ニッポン」を拝聴しました。 本田先生の語り口はいつもながら穏やかで、しかしデータと臨床の両面から語られる内容は非常に示唆に富んでいました。講演を聞きながら、私はこれまでの現場経験の中で感じてきたこと、そしてABAの実践者としての自分の立ち位置を改めて見つめ直す時間になりました。以下は、講演内容そのものの解説ではなく、私自身が特に心に残ったポイントと、それを通して考えたことをまとめたものです。


 

1. 早期支援が「二次障害を予防する」という確かな手応え

講演の中で最も印象的だったのは、 早期から診断・療育・福祉支援につながったASD児は、成長後に二次障害を起こしにくい という点でした。しかも、ただ「問題が少ない」というだけではなく、生活習慣や余暇活動、セルフケアなど、生活の質(QOL)が高いという事実が示されていました。私はこれを聞きながら、 「療育とは“問題行動を減らす”ためのものではなく、“その人らしく生きる土台を整える”営みなのだ」 という当たり前のことを、改めて強く実感しました。

 

2. 学力やソーシャルスキルより“生活力と余暇スキル”が重要

本田先生が繰り返し強調されていたのが、 療育の中心は“生活力”と“余暇スキル”であるべきだ という点です。これはABAの現場でも痛感するところです。 学力やソーシャルスキルはもちろん大切ですが、それ以上に、

  • 身支度ができる

  • 食事や睡眠のリズムが整う

  • 一人で楽しめる余暇がある

  • 気持ちを落ち着ける方法を知っている

こうした力が、成人期の安定した生活を支えます。

講演資料でも、横浜での調査でASD成人の多くが一般人口よりもセルフケアや家事を高い頻度で行っていることが示されていました。これは、幼少期からの支援が生活習慣として根づいた結果だと感じます。

 

3. IQが高いほど不登校の割合が高いという現実

これは支援者として胸が痛む話でした。一般的には「IQが高い=困りごとが少ない」と誤解されがちですが、実際にはその逆で、 IQが高いASD児ほど不登校の割合が高いというデータが示されていました。

理由としては、

  • 周囲から「できるはず」と期待されやすい

  • 本人も“できているふり”をしやすい

  • 過剰適応が続き、限界が突然くる

といった背景があります。

私はこの部分を聞きながら、 「支援とは“できることを増やす”だけではなく、“無理を減らす”ことでもある」 という点を改めて思い知らされました。

 

4. ニューロダイバーシティを前提としたABAへ

本田先生は、療育の方向性として 「定型発達に近づけるのではなく、ニューロダイバーシティを尊重する介入が重要」 と述べられていました。

これはABAの世界でも大きな潮流になっています。

かつてのABAは「行動を変える」ことが中心でしたが、現在は、ポジティブ行動支援(PBS、PBIS,SWPBS)などで

  • 本人の選択を尊重する

  • 生活の質を高める

  • ストレスを減らす

  • 自己決定を支える

といった価値観が重視されています。

私はABAを長年実践してきましたが、 ABAは“人を変える技術”ではなく、その人に合わせて“環境を整える科学”である という理解がますます重要になっていると感じます。ABC研究所ホームページで研修を紹介しています。https://www.abclab15.com/

 

5. 支援は「アセスメント → 計画 → 実行 → 評価 → 微調整」の循環

本田先生は、医療の支援モデルとして アセスメントに基づく計画と、評価を通した微調整の重要性 を強調されていました。まだまだ不十分ですが教育や福祉もそのように変わってきています。

これはまさにABAの基本プロセスと一致します。

  • 行動の機能を理解する

  • 環境調整を行う

  • 代替行動を教える

  • データを取り、効果を検証する

  • 必要に応じて修正する

支援は“やりっぱなし”では成立しません。 常に観察し、評価し、調整し続けることが専門性の核心だと改めて感じました。障害福祉ではこれからですが、介護福祉分野では厚労省により科学的なアプローチやDX化が進められています。

 

6. 口頭指示より視覚的支援が有効

講演では、視覚的支援の重要性にも触れられていました。

  • 口頭指示は一瞬で消える

  • 聴覚処理が苦手な子には負担が大きい

  • 視覚情報は残り、予測可能性を高める

視覚支援は「特別な支援」ではなく、 ユニバーサルデザインとして全ての子どもに有効だと改めて感じます。

 

7. 二次障害を防ぐために必要なのは“無理をさせないこと”

ASD児の二次障害の多くは、 過剰適応(頑張りすぎ・我慢しすぎ)が背景にあります。

  • 過剰なルール遵守

  • 過剰な遠慮

  • カモフラージュ(特性を隠す)

こうした行動は一見「良い子」に見えますが、実は本人の負担が大きく、限界が突然訪れます。これは、家庭環境や社会環境からの無意識の圧力のようなものが大きく影響していると思います。支援者として大切なのは、 「頑張らせる」のではなく、「頑張らなくていい環境をつくる」こと だと改めて感じました。

 

 

8. 文科省の3段階支援はPBISの三層モデルと酷似

講演で紹介された文科省の三段階支援は、

  1. ユニバーサルデザイン(全体支援)

  2. 合理的配慮(環境調整)

  3. 個別支援(専門的支援)

という構造で、これはまさに PBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports)の三層支援モデル と同じ考え方です。学校全体での予防的アプローチが不可欠であることを、改めて確認しました。

 

9. 幸せな生活の鍵は“自己決定”と“助けを求める力”

講演の終盤で本田先生が語られた言葉が、私には非常に響きました。

AS者がASDにならないためには、 苦手なことや嫌なことをしなくていい人生設計と、 保護者が過大に期待しないことが大切。

人が幸せに生きるために必要なのは、

  • 自分で選ぶ力(自己決定)

  • 困ったときに助けを求める力

この2つだという点は、私自身の臨床経験とも一致します。

 

おわりに ― 支援の本質は「その人の人生の重荷を軽くすること」

今回の講演を通して、私は改めて 「支援とは、その人の人生の重荷を軽くしてあげる営みである」 という原点に立ち返りました。

  • 早期支援の重要性

  • 生活力と余暇スキルの価値

  • IQの高さと不登校の関係

  • ニューロダイバーシティの視点

  • 過剰適応とカモフラージュの危険性

  • 自己決定と助けを求める力

これらはすべて、 「その人が無理なく、その人らしく生きるための支援」 という一点につながっています。

支援者として、臨床家として、そして一人の人間として、私はこれからも「その人の人生の重荷を軽くする支援」を探求し続けたいと思います。

 
 
 

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