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岩国ABAセミナー報告記 ― 形だけの支援から卒業するために

  • 1 分前
  • 読了時間: 7分

2026年3月15日、岩国市民文化会館にて、午前・午後あわせて6時間のABAセミナーを開催しました。 今回のテーマは午前が「形だけの支援から卒業する ABA基礎講座」、午後が「支援者の安全を守りながら行動を変えるABA機能的支援」。 どちらも、現場で働く支援者が“明日から使える視点”を持ち帰れるよう、実践的な構成でお届けしました。

参加者は45名を超え、岩国市内だけでなく、広島県の法人、そしてオンラインでは鹿児島からの参加もあり、地域を越えた学びの場となりました。 会場近くのお好み焼き店でのランチも好評で、午後のエネルギーをしっかり満たしてから後半戦に臨むことができました。

 

■ 午前:形だけの支援から卒業するためのABA基礎

午前の講座では、まず「ABAとは何か」という根本から整理しました。 資料にもあるように、

「行動は『環境との相互作用』で変わるという立場」 「見た目の行動を解釈するのではなく、事実を観察して記録する」という基本姿勢を確認し、支援の“土台”を揃えるところからスタートしました。

● 「性格」「感情」「意図」で説明しない

支援現場ではつい、

  • 「わがままだから叩く」

  • 「イライラしているから暴れる」

  • 「わざとやっている」

といった“推測”で行動を説明してしまいがちです。

しかし、資料にもある通り、「性格は行動の説明にならず、支援に活かせない」 「感情は結果であり、行動の直接の原因とは考えない」という視点を持つことで、支援の精度は大きく変わります。

● 行動の機能を理解する

行動には必ず理由(機能)がある。 ABAではそれを大きく4つに整理します。

  1. 物や活動を得る

  2. 人の注目を得る

  3. 感覚刺激を得る

  4. 嫌なことを避ける

この4つのどれに当てはまるかで、支援の方向性はまったく変わります。

■ K事業所のAさんを題材にしたアセスメント演習

今回のセミナーの大きな特徴は、K事業所の職員さんが実際の事例(Aさん)を提供してくださり、参加者全員でアセスメント結果から検討を行ったことです。

Aさんは20代の男性で、 「近くにいる人を叩く・殴る・蹴る」という行動がほぼ毎日見られるとのこと。

資料には、「近くに居る人を叩く、殴る、蹴る」 「他害を受けた人が離れる」と記されており、ここから行動の機能を推定していきました。

● ABC記録をその場で取りながら分析

K事業所の職員には実際にABC記録をつけてもらい、 「先行事象 → 行動 → 結果事象」の流れを丁寧に追いました。

その結果、Aさんの行動は、

  • 人が近くにいると叩く

  • 叩かれた人が離れる

という随伴性が繰り返されていることから、 「嫌な刺激(人の存在)を避けるための行動」 である可能性が高いと推定されました。

● マグマ要因の整理

さらに、Aさんの行動を強める背景要因(マグマ要因)も検討しました。

資料には、「聴覚過敏」「人が近くにいることが嫌」「動きの少ない作業が苦手」などが挙げられており、 これらが積み重なることで行動が起こりやすくなることを、参加者全員で共有しました。

 

■ 午後:支援者の安全を守りながら行動を変える

午後の講座では、午前の分析を踏まえ、 「では実際にどう支援を組み立てるか」 という実践的な内容に踏み込みました。

● 安全確保は“支援の前提条件”

資料には、

「危険行動は『分析より先に安全確保』」 「安全は行動を変えるための前提条件」

とあります。

行動の機能を理解していても、支援者が安全でなければ支援は成立しません。 そのため、まずは環境調整や動線の工夫、距離の取り方など、 “危険を未然に防ぐ仕組みづくり” を徹底的に考えました。

● Aさんの環境調整を全員で検討

参加者からは次々とアイデアが出ました。

  • 来所・送迎の時間をずらす

  • ミーティング時は席を離す

  • パーソナルスペースを視覚化する(フラフープ・マット・テント)

  • 動線を分ける

  • 苦手な利用者と接触しないよう配置を工夫する

  • カームダウンエリアを近くに設ける

どれも現場のリアリティに根ざした提案で、 「明日からすぐに試せる」ものばかりでした。

● 代わりになる行動(機能的コミュニケーション)

行動を減らすためには、 “行動問題と同じ機能を持つ、より適切な行動” を教える必要があります。

資料では、「代わりになる行動は、行動問題と同じ機能(結果)だが、より適切な行動」と明記されています。

Aさんの場合であれば、

  • 人が近くにいるのが嫌 → 自分で距離を取る行動を教える

  • カームダウンカードを使って離れることを伝える

  • 休憩場所への移動を自発的にできるようにする

などが候補として挙がりました。

■ 参加者の学びと、私自身の手応え

今回のセミナーは、単なる講義ではなく、 “参加者全員でAさんの支援を組み立てる” というワークショップ型の学びになりました。

広島や鹿児島からの参加者も積極的に意見を出してくださり、 地域を越えた知見の交流が生まれたことも大きな収穫でした。

また、参加者からは、

  • 「行動の理由を丁寧に見立てる大切さが腑に落ちた」

  • 「安全確保の視点がとても実践的だった」

  • 「形だけの支援から抜け出すヒントが得られた」

といった声が寄せられ、 ABAの本質がしっかり伝わった手応えを感じています。

■ おわりに

支援は“形”ではなく“機能”から考える。 そして、支援者の安全を守りながら、本人のQOLを高める支援を組み立てる。

この2つの視点が揃うことで、 現場の支援は確実に変わります。

今回の岩国セミナーが、参加者の皆さんの現場での実践に少しでも役立ち、 Aさんをはじめとする利用者の生活がより豊かになることを願っています。

次回の岩国での開催も、また楽しみにしています。

 

■ 私が今回のセミナーで特に強調したかったこと

今回の岩国セミナーを通して、私自身が改めて強調したかったのは、行動問題に対する“正しい向き合い方”です。 支援は「困った行動が出たら何とか止める」という“対症療法”ではなく、もっと広い視野と丁寧な分析が必要です。

資料にもあるように、

「観察して記録した事実から行動の機能を探る」 「やみくもに行動に対応したり、支援するのではない」

という姿勢こそが、支援の質を決定づけます。

● ① 行動問題は闇雲に対応しない

行動には必ず理由(機能)があり、 理由が違えば、必要な支援はまったく変わります。

  • 注目を得たい行動

  • 嫌な刺激から逃れたい行動

  • 感覚刺激を得たい行動

  • 物や活動を得たい行動

これらを混同したまま対応すると、むしろ行動を強めてしまうことすらあります。

● ② 機能がわからなければ、観察と記録で明らかにする

印象や推測ではなく、 ABC記録・スキャッタープロット・行動随伴性の分析 といった“事実に基づくアセスメント”が不可欠です。

今回のAさんの事例でも、 「近くに人がいる → 叩く → 人が離れる」 という随伴性が明確になったことで、 “逃避の機能”が浮かび上がりました。

● ③ 対応は、行動の機能を多面的に基に考える

行動の機能がわかったら、 マグマ要因・環境調整・代替行動・強化の手続き・事後対応 という複数の視点から支援を組み立てる必要があります。

行動だけを見て「叩いたら注意する」「飛び出したら追いかける」ではなく、

  • なぜその行動が起きるのか

  • どんな環境なら起きにくいのか

  • 代わりにどんな行動を教えるべきか

  • どの行動を強化し、どれを強化しないか

といった“多層的な支援デザイン”が求められます。

● ④ 問題行動だけに目を奪われず、生活全体を見る

行動問題は、生活の一部にすぎません。 むしろ、

  • 生活リズム

  • 好きな活動

  • 苦手な活動

  • 感覚特性

  • 人との距離感

  • 日課の見通し

  • 余暇の充実

  • 身体の健康状態

といった生活全体の質(QOL)が整うことで、行動問題は自然と減っていきます。

資料にも、

「行動問題が起きにくい先行事象を同定し、興味関心や長所を生かした日課をつくる」

とあるように、 生活のデザインこそが最大の予防策です。

● ⑤ 支援者・関係者が情報共有し、理解しながら取り組む

ABAは“個人戦”ではなく“チーム戦”です。

  • 支援者間の共通理解

  • 家族との連携

  • 医療・福祉・学校との協働

  • 情報共有の仕組み

  • 支援方針の統一

これらが揃わなければ、どれだけ良い支援案を作っても、現場で再現されません。

今回のセミナーでも、 K事業所の皆さんがAさんの情報を丁寧に共有してくださったことで、 参加者全員が同じ視点で支援を考えることができました。

■ まとめ ― 行動を変えるのではなく、生活を整える

行動問題は「その行動だけを変えよう」とすると、うまくいきません。 行動は生活の一部であり、 生活が整えば、行動は自然と変わる というのがABAの本質です。

今回の岩国セミナーが、 参加者の皆さんの現場での支援をより豊かにし、 利用者の生活の質を高める一助となれば幸いです。

 
 
 

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