【訪問記】ネストデザイン──“つくること”が生きる力になる場所
- 2月18日
- 読了時間: 4分
ASD支援の視点から見えた、創作と福祉の新しいかたち
今日は、北九州にある就労継続支援B型事業所「ネストデザイン」を訪問してきました。 ここは、単なる作業所ではありません。 “つくること”を中心に据え、利用者さん一人ひとりの「らしさ」をそのまま作品として世の中に届けていく、独自の世界観を持ったアトリエのような場所です。
資料にもあるように、ネストデザインの理念はとても明確です。
「作品そのもので評価される世界を目指しています。」
福祉だから応援される、ではなく、 “作品として魅力があるから評価される”。 この姿勢が、空間にも、スタッフにも、作品にも一貫して流れていました。
■ アートディレクター嶋田さんの“異色の経歴”が生む世界観
ネストデザインを率いるアートディレクターの嶋田良二さんは、元々デザイン会社で活躍されていた方。 退職後に福祉の世界へ飛び込み、今ではB型事業所の統括マネージャーとして現場を支えています。
資料の写真にもあるように、

「今日も創作作業が続きます。集中してたり、してなかったり(笑)」
と、肩の力が抜けたコメントが印象的です。
実際にお会いしてみると、 「利用者さんを型にはめない」 「その人の“らしさ”を作品にする」 という姿勢がとても自然体で、押しつけがましさが一切ありません。
■ “枠組みは最小限”──ASD支援としても理にかなった工夫
今日の訪問で特に印象に残ったのは、 「自由に描いてもらうのではなく、最低限の枠組みを設定している」 という点でした。
例えば、
色はある程度指定する
テーマを決める
モチーフの候補を提示する
といった工夫がされています。
これは、ASDの方にとって非常に分かりやすい支援です。
完全な自由は、かえって負荷が高くなりやすい。 しかし、枠組みがあり、その中で自分の表現を出せると、安心して創作に集中できます。
ABAの視点で見ても、 「明確な手がかり(SD)を提示し、成功しやすい環境を整える」 という意味で、とても合理的なアプローチです。
■ 作品は“誰一人として同じタッチがない”
実際に作品を見せていただくと、その多様性に驚かされます。
資料にもあるように、
「得意なこと、好きなことはみんな違います。だからこそ、ここでは同じ作品はひとつもありません。」
まさにその通りで、
中世の宗教画をモチーフにする人
雑誌の切り抜きからインスピレーションを得る人
レトロ映画のワンシーンを描く人
動物を独自のタッチで描く人
など、世界観がまったく違う。
「福祉の作品」という枠を軽々と超えていて、 純粋に“アートとして面白い”と感じるものばかりでした。
■ 「応援」ではなく「作品」として評価される喜び
資料の中で、私が特に心を動かされた一文があります。
「『面白い!』『おしゃれ!』『ジワる!』と純粋に感じてもらえることが、なにより嬉しい瞬間。」
この言葉には、ネストデザインの哲学が凝縮されています。
“かわいそうだから買う” “応援したいから買う”
ではなく、 「作品として魅力があるから買う」 という世界を目指している。
利用者さんにとっても、 「いいね」と言われる体験は、自己効力感を高める大きな力になります。
資料にもこうあります。
「その小さなやりとりが大きな自信につながります。」
まさにその通りで、 “評価される経験”は、行動の強化としても非常に大きな意味を持ちます。
■ アトリエは“ごちゃごちゃしたおもちゃ箱”のような空間
ネストデザインの空間は、一般的な福祉施設のイメージとはまったく違います。
資料にもあるように、
「常にBGMが流れ、アートが好きな仲間もそうでない人も集まる、ごちゃごちゃしたおもちゃ箱のようなアトリエ空間です。」
実際に足を踏み入れると、 壁一面に作品が飾られ、 棚には色とりどりの画材や木工品が並び、 利用者さんの創作途中の作品があちこちに置かれています。
見学者が思わずキョロキョロしてしまうのも納得です。
スタッフの方が 「それはですね…」 と笑いながら説明してくれる姿も、とても温かい。
この“自然体でいられる空気”が、利用者さんの継続につながっているのだと感じました。
■ “つくること”が生きる力になる
ネストデザインの理念は、資料の冒頭にこう書かれています。
「つくることが生きる力になる」
今日の訪問で、この言葉の意味がよく分かりました。
創作は、
自分の世界を表現する行為であり
誰かとつながる手段であり
自信を積み重ねるプロセスであり
社会参加の形でもある
ネストデザインは、そのすべてを丁寧に支えている場所でした。

■ 最後に
福祉の現場では、どうしても「できる・できない」に目が向きがちです。 しかしネストデザインは、 「その人の世界観そのものに価値がある」 という視点で関わっています。
これは、ABAの“行動を強みから捉える”という考え方とも深くつながります。
今日の訪問は、私自身にとっても大きな学びでした。 またぜひ伺いたいと思います。











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