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医療強度行動障害研究会・心理部会オンラインキックオフミーティング報告

  • 3 時間前
  • 読了時間: 5分

発起人:鳥取大学・井上教授/事務局:肥前医療センター・會田医師

令和8年5月7日(木)医療強度行動障害研究会の新たな試みとして、心理職を中心とした「心理部会」が立ち上がった。 そのオンライン・キックオフミーティングが開催され、全国の医療・福祉・教育・大学研究者など、多様な領域で強度行動障害支援に携わる専門家が参加した。本稿では、プライバシーに配慮しつつ、議論のエッセンスをまとめ、心理部会が目指す方向性を整理する。


1. 参加者の背景と問題意識

まず印象的だったのは、参加者の領域の広さである。 医療機関の強度行動障害チーム、発達障害者支援センター、大学研究者、福祉施設の相談員、学校現場のコンサルタント、早期療育、TEACCH、ESDM、PBSなど、実践と研究の両面から多様な専門家が集まった。

● 現場の共通課題

参加者の発言から浮かび上がったのは、次のような共通課題である。

  • 機能的アセスメントを現場でどう実装するか 「アセスメントまではできるが、その後の実践につながらない」「保護者や支援者にどう伝えるかが難しい」という声が複数あった。

  • 他職種連携の難しさ 医療・福祉・学校の連携がうまくいかず、心理職が孤立するケースもあるという。

  • 組織づくりの課題 「相談し合える環境をどう作るか」「チームとしての支援体制をどう整えるか」が、支援の成否を左右するという指摘があった。

  • 人材育成の停滞 ABC記録や機能的アセスメントの重要性は理解されているが、現場では「記録が大変」「時間がない」という理由で浸透しにくい。

  • 重度事例の支援の難しさ 医療機関では、家族のメンタルヘルスや家族機能の問題が支援に大きく影響するという指摘もあった。

これらは地域や職種を超えて共通する課題であり、心理部会が取り組むべきテーマの方向性を示している。


2. 心理部会の役割と可能性

発起人の井上教授は、年間500件を超える相談を受ける立場から、心理職が果たすべき役割として次の点を強調した。

  • 事例検討の重要性 守秘義務を守りつつ、資料は最小限にし、口頭での共有を中心にすることで、実践的な学びが深まる。

  • 家族支援の視点 強度行動障害の背景には、家族のメンタルヘルスや家族機能が大きく関わることが多い。

  • 他職種連携の実際 医療・福祉・教育の連携は理想論ではなく、現場での具体的な工夫が必要である。

また、會田医師からは、看護部会の経験を踏まえ、「困っていることを自由に話せる場」「年3回の研修」「学会発表へのチャレンジ」など、部会運営のヒントが共有された。心理部会も、同様に「自由に語り合える場」と「学びの場」の両立を目指すことが確認された。


3. 今後の活動案:テーマ設定の必要性

議論の中で、心理部会としてのテーマ設定の必要性が複数の参加者から提案された。

● 候補として挙がったテーマ

  • 機能的アセスメントの活用方法 現場でどう使うか、どう伝えるか、どこまで求めるか。

  • 介入方法の共有 PBS、TEACCH、ESDM、早期介入、医療モデルなど、多様なアプローチの比較と統合。

  • 予防モデルの研究 教育と福祉での違い、予防的支援の可能性。

  • 他職種連携の実践 学校・福祉・医療の連携の成功例と課題。

  • 組織づくり・チームづくり コンサルテーションの成否を分ける「相談し合える環境」の作り方。

  • 心理職の役割の再定義 放デイや入所施設で心理職が孤立しないための仕組みづくり。

これらは、心理部会が単なる情報交換の場にとどまらず、実践と研究をつなぐ「知の共同体」として機能するための重要なテーマである。


4. 事例検討の進め方

心理部会では、月に1回、毎回2つ程度の事例を扱う方向で合意された。 6月の次回ミーティングでは、発達障害者支援センターの参加者が事例提供を行う予定である。

事例検討のポイントとしては、誰でも気負わずに発表できるように

  • 守秘義務を徹底する

  • 資料は1枚程度にまとめ、足りない部分は口頭で説明

  • 多職種の視点を歓迎する

  • 「困っていること」を率直に共有する

といった方針が共有された。


5. 事務局運営とオンライン活用

事務局からは、オンライン運営の工夫として次の提案があった。

  • Google Meetで録音し、AI文字起こしを活用する 個人負担でAIスタジオを利用し、議事録作成の効率化を図る。

  • 司会は3名で分担する 負担を分散し、継続的な運営を可能にする。

オンラインの利点を活かしつつ、全国の専門家が継続的に参加できる体制を整えていく方針が示された。


6. 心理部会が目指す未来

今回のキックオフミーティングは、まだ始まりにすぎない。 しかし、参加者の発言からは、心理部会が果たしうる役割の大きさが明確に見えてきた。

● 心理部会が担うべき3つの柱

  1. 実践知の共有 現場での工夫や失敗、成功例を率直に語り合う場。

  2. 研究と実践の橋渡し 大学の知見を現場に届け、現場の課題を研究につなげる循環。

  3. 多職種連携のハブ 医療・福祉・教育をつなぐ心理職の役割を再定義し、支援の質を高める。

強度行動障害支援は、単独の専門職では決して完結しない。 心理部会は、その複雑な支援領域をつなぐ「対話の場」として、今後ますます重要な役割を担うだろう。


7. おわりに

今回のキックオフは、全国の専門家が「同じ課題を抱えている」ことを再確認する場となった。 そして、心理部会が「悩みを共有し、学び合い、支援の質を高めるための共同体」として機能する可能性が示された。次回以降の活動では、事例検討やテーマ別ディスカッションを通じて、より具体的な知見が蓄積されていくだろう。 心理部会の今後の発展に期待したい。


 
 
 

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