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北九州市保育マイスター認定式の直後に開催された保育士研修

子どもの行動を理解し、支援につなげるために必要な視点とは

2月3日、北九州市役所3階の大集会室では、全国初の北九州市保育マイスター認定式

に続いて、保育士向けの研修会が開催されました。 認定式の熱気が残る会場に、現場で日々子どもたちと向き合う保育士の皆さんが集まり、真剣な表情で席に着かれていました。

今回の研修は、これまで10年以上にわたり市の直営保育所を対象に行われてきたものですが、令和7年度に初めて民間保育所も参加対象に加わったという大きな節目の年でした。 募集開始からわずか1日で定員に達し、保育現場でのニーズの高さを改めて実感しました。

さらに驚いたのは、参加者全員が事前課題として配布したABAの行動分析シートを提出してくださったことです。 どのシートも丁寧に書かれており、子どもを理解しようとする姿勢が伝わってきました。 このような質の高い研修は、これからの就学前支援に大きな力になると感じています。


子どもの行動には必ず理由があります

保育現場でよく聞かれる悩みのひとつに、 「どうしてこの子はこんな行動をするのだろう?」 というものがあります。

  • 走り回る

  • 叩く・噛む

  • 泣き続ける

  • 友達の遊びを壊す

  • 飛び出す

  • 大声を出す

  • 特定の友達に執着する

これらは一見すると“困った行動”に見えますが、行動分析の視点では、 「行動には必ず機能(理由)がある」   と考えます。

行動の背景には、

  • 注目してほしい

  • 好きな活動を続けたい

  • 嫌なことを避けたい

  • 感覚的に落ち着かない

  • 不安が強い

  • 言葉で伝えられない

といった、子どもなりの“目的”が存在します。

この目的を理解せずに「やめなさい」「静かにしなさい」と言っても、行動は変わりません。 むしろ、注意が強化となり、行動が増えてしまうこともあります。


行動を理解するためのABC

研修では、行動を理解するための基本である「ABC」の視点を紹介しました。

  • A(先行事象):行動の直前に起きたこと

  • B(行動):実際に起きた行動

  • C(結果事象):行動の直後に起きたこと

この3つを記録し、つながりを読み解くことで、行動の意味が見えてきます。

例えば「飛び出す」という行動ひとつをとっても、

  • 外に好きなものがあるから飛び出す(物を得る)

  • うるさい音から逃げたいから飛び出す(逃避)

といったように、理由はまったく異なります。

理由が違えば、支援方法も変わります。 だからこそ、推測ではなく記録に基づく理解が必要なのです。


保育現場で多い“困った行動”の背景

今回の研修では、北九州市内の複数の保育所から寄せられた事例をもとに、行動の背景を分析しました。

よく見られた行動の傾向

  • 大声・叫び

  • 走り回る

  • 飛び出す

  • 叩く・噛む

  • 物を投げる

  • 友達にくっつく

  • かんしゃく

  • 泣き続ける

これらの行動は、 「注目」「要求」「逃避」「感覚刺激」   のいずれか、または複合した機能を持っていることが多いと分かりました。

行動が出やすい場面

  • 活動の切り替え

  • 集団活動の開始

  • 初めての活動

  • 見通しがない状況

  • 特定の友達との関わり

  • 保育士からの注意

これらは、子どもにとって負荷が高く、行動が出やすい場面です。

マグマ要因(背景要因)を見落とさない

行動の背景には、行動そのものとは別に、 “マグマ要因”と呼ばれる間接的な要因が存在します。

  • 睡眠不足

  • 生活リズムの乱れ

  • 感覚過敏

  • 衝動性

  • 言語の遅れ

  • 家庭環境の影響

  • 不安の強さ

  • 愛着の揺らぎ

これらは、行動を直接引き起こすわけではありませんが、 行動が出やすい状態をつくる“地盤”になります。

保育士が「なぜ今日はこんなに荒れているのだろう?」と感じるとき、 背景にはこうした要因が潜んでいることが多いのです。


事例から見えた支援のポイント

研修では、複数の事例を取り上げながら、支援の方向性を整理しました。

1. 甘えたい気持ちが強い子

  • 甘えられる時間を“見える化”する

  • 1対1の時間を意図的に作る

  • 飛び出しは予防が最優先

2. 事実と異なる発言やふざけ行動

  • “嘘”を責めるのではなく、行動の機能を理解する

  • 認められる経験を意図的に作る

  • 高揚しやすい友達とは距離を調整する

3. 共同遊びに入りたいがうまく入れない子

  • 「入れて」「一緒にやろう」などの定型文を教える

  • 壊してしまったときの“修復スキル”を教える

  • 並行遊びを許容する

4. 順番が待てない・要求が通らないと荒れる子

  • 順番待ちはスキルとして段階的に教える

  • タイマーや視覚カードを活用

  • “待つ間の活動”を用意する

5. 感覚過敏や見通しのなさでパニックになる子

  • 活動の流れを視覚化

  • 事前体験(プライミング)を取り入れる

  • 座る位置や音環境を調整する

6. 特定の友達への強い執着

  • “距離の取り方”を具体的に教える

  • 行動レベルのスキルに分解する

  • 心の理論を求めすぎない

どの事例にも共通していたのは、 「行動の機能に合った代替行動を“具体的に”教える」   という点でした。


参加者全員がABAシートを提出したことの意味

今回の研修で特筆すべきは、 参加者全員が事前課題のABAシートを提出していたことです。

  • 子どもの行動を丁寧に観察している

  • 先行事象・行動・結果事象を整理しようとしている

  • 背景要因まで考えようとしている

  • チームで共有しようとしている

こうした姿勢は、保育現場の質を大きく高めます。

民間保育所が加わったことで、これまで以上に多様な視点が集まり、 研修全体の学びが深まったことも印象的でした。


子どもの行動で悩んだときは、ひとりで抱え込まないでください

保育現場では、 「この子の行動の理由が分からない」 「どう支援すればいいのか迷っている」 という悩みが尽きません。

そんなときは、ぜひ専門家に相談してください。 行動の背景を整理し、支援の方向性を一緒に考えることで、 子どもも、保育士も、保護者も、ずっと楽になります。

▶ ABC研究所へのご相談はこちら   https://www.abclab15.com/contact/


まとめ

今回の研修は、

  • 初めて民間保育所も参加した節目の年

  • 申し込み開始1日で定員に達するほどの高いニーズ

  • 参加者全員がABAシートを提出する高い意欲 という、非常に意義のある取り組みとなりました。

行動には必ず理由があり、 その理由を理解することが、子どもの成長を支える第一歩です。

これから就学前の子どもたちが安心して学び、育っていけるように、 今回の研修が現場での支援に役立つことを願っています。


 
 
 

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