発達障がい専門医の確保が難しい理由とその処方箋
- Shigeru Imamoto

- 1 日前
- 読了時間: 5分
先日、発達障がい専門のクリニックを開設したいと強く願っている障がい福祉事業をやっている理事長と一緒に、長年、北九州市総合療育センターで重責を担ってこられ、現在退職されている医師とで懇談の機会を持ちました。そこで、医師を確保すること自体が難しい時代になっていることをお伺いし、これはいけないと思った次第です。これは、国が制度的に改善しないといけないと思うと同時に、現状でできることを検討してみました。
①大学病院の医師派遣の仕組みが変化している
昔は大学が地域に医師を派遣する「医局制度」が強く、地域の病院・施設に若手医師が来やすかった。
現在は研修医を外に出せない(研修プログラムの制約)、大学病院自体が人手不足 などにより、外部への派遣が大幅に減少。結果として、非常勤医師の確保が難しくなっている。
② 専門医制度の資格化・細分化による制約
小児科、精神科、児童精神科などの専門医制度が厳格化し、研修内容・研修場所が細かく規定されるようになった。
若手医師は資格取得のために決められた施設での研修を優先せざるを得ない。
そのため、自由に外部のクリニックで非常勤をする余裕が減っている。
③ 若手医師の働き方の変化
昔のように「地域のために一肌脱ぐ」という文化が弱まり、ワークライフバランスを重視する傾向が強い。
発達障がい診療は、診断に時間がかかる。家族支援が必要で、クレームリスクが高い。診療報酬が低いなどの理由で、若手医師が積極的に選びにくい領域。
④人口減少 → 医師数の減少 → 専門医の偏在
地方では人口減少に伴い、医師の絶対数が減少。特に児童精神科医は全国的に不足しており、都市部に集中し、地方にはほとんどいない。北九州も例外ではなく、発達障がいを専門に診られる医師は限られている。
⑤ 医療訴訟リスクの増加と「リスク回避」の傾向
発達障がい診療は、診断の曖昧さ、家族の不満、支援機関との連携不足などから、トラブルや訴訟リスクが高い領域。
そのため、医師側は、「新規のクリニックで非常勤をする」ことに慎重になりがち。
まとめ:なぜ非常勤医師が見つからないのか
発達障がいを診られる医師が不足している背景には、制度・文化・人口・リスクの複合的な要因がある。
特に大きいのは以下の3点:
・大学病院から医師が出てこない(制度の変化)
・専門医制度の厳格化で、若手医師に余裕がない
・発達障がい診療は負担が大きく、リスクも高い
これらが重なり、
「非常勤で来てくれる発達障がい専門医」を探すのは全国的に難しい状況になっている。
発達障がいに関する社会的要請に応えるための現実的な方向性(医師不足・制度制約を前提にした“突破口”)
① 「医師だけで支える」モデルからの脱却
医師不足は構造的で、短期的に解消できません。
そのため、医師の役割を最小限にし、他職種で支えるモデルが必要です。
🔹 具体策
・医師は、診断・薬物療法・医学的判断に特化
・それ以外の発達評価・行動支援・家族支援・環境調整は、心理士・OT・ST・ABA専門家・保育士・相談支援専門員が担う
・「医師の負担が軽いクリニック」を設計することで、非常勤医師が参加しやすくなる。
これは北九州が得意とする「多職種連携の設計」が活きる部分。
② 医師の“リスク”を減らす仕組みを作る
医師が発達障がい診療を避ける理由の多くは、トラブル・クレーム・訴訟リスク。
🔹 リスクを減らす工夫
・初診前に行動観察・発達検査・生活情報の整理をスタッフが実施
・医師は「整った情報」をもとに診断するだけ
・家族支援・説明・フォローはスタッフが担当
・相談窓口を医師ではなくコーディネーターが担う
・医師の診療時間を短く、明確に区切る
医師が「ここなら安心して関われる」と思える環境を作ることが最重要。
③ 大学病院に頼らない“独自の医師ネットワーク”を作る
医局からの派遣が期待できない以上、個人で動ける医師を探す必要がある。
🔹 狙うべき医師像
・退職後のベテラン医師
・子育て中でフルタイム勤務が難しい医師
・発達障がいに関心がある精神科医
・週1回だけ働きたい医師
・オンライン診療に関心がある医師
あなたが昨日会った退職医師のような方は、まさに“キーパーソン”。
④オンライン診療の活用
発達障がい診療は、対面でなくても可能な部分が多い。
🔹 オンラインでできること
・問診
・家族面談
・発達相談
・薬のフォロー
・行動観察(家庭動画の共有)
・医師が遠方でも、非常勤として関わりやすくなる。
⑤ 地域資源との連携で“医師の負担を分散”
医師がすべてを抱え込む必要はない。
🔹 連携先
・児童発達支援・放デイ
・相談支援
・保育所等訪問支援
・教育委員会・特別支援教育
・行動支援専門員
・ABA専門家(私の領域)
医師は“診断と医学的判断”に集中し、支援は地域全体で担う。
⑥「医師が来たくなるクリニック」を作る
医師不足の時代は、医師に選ばれるクリニックでなければ人は来ない。
🔹 医師が魅力を感じるポイント
・事務作業が少ない
・トラブル対応をスタッフが担う
・診療時間が短い
・多職種が優秀で、医師が孤立しない
・医師の専門性が尊重される
・クリニックの理念が明確で、社会的意義が高い
私が関わると、この部分は非常に強くなる。
⑦“医師がいなくてもできる支援”を最大化する
発達障がい支援の多くは、医師がいなくても提供できる。
🔹 医師が不要な領域
・行動支援(ABA)
・家族支援
・環境調整
・ペアレントトレーニング
・ソーシャルスキルトレーニング
・発達検査(心理士)
・相談支援
医師は「診断と薬物療法」に限定し、支援の中心は他職種が担う。
最終的な方向性(まとめ)
発達障がいの社会的要請に応えるには、医師不足を前提にした“新しいクリニックモデル”を作ることが必要。
🔹 そのモデルとは
・医師の負担を極限まで減らす
・多職種が主役になる
・オンラインを活用する
・ベテラン医師・子育て医師など“動ける医師”を狙う
・地域全体で支援を分担する
・医師が安心して働ける環境を整える
これができれば、医師不足の時代でも、発達障がい支援の社会的要請に応えられる。




















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