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強度行動障害の支援は「行動の意味」を理解することから始まります

八女地区すいれん研修会でお伝えした“支援者が前向きになるABAの視点”

強度行動障害のある方への支援は、日々の現場で最も負担が大きく、支援者の心身をすり減らしやすい領域です。 「どうしてこんな行動をするのか分からない」「何をしても改善しない」「家庭や施設が疲弊してしまう」 こうした声は、私がコンサルテーションで伺う現場でも常に聞かれています。

今回、八女地区障害者地域生活支援拠点センターすいれん主催の研修会で、強度行動障害のある方の行動問題をどのように理解し、どのように支援につなげていくかについてお話ししました。 この記事では、その内容を整理し、支援者の方々が明日からの支援に活かせる視点をまとめていきます。


強度行動障害は「個人の問題」ではなく「環境との相互作用」で理解します

強度行動障害は、自傷・他害・物壊し・パニックなど、通常では考えられない頻度で行動問題が生じ、対応が難しい状態を指します。 しかし、ABA(応用行動分析)の視点では、これらの行動は“その人の性格や心の弱さ”ではなく、環境との相互作用の中で生じていると考えます。

行動を理解するためには、次の3つの視点が欠かせません。

  • 行動の直前に何があったか(先行事象)

  • どんな行動が起きたか(行動)

  • 行動の直後に何が起きたか(結果事象)

この「ABC」の関係を丁寧に記録し、読み解くことで、行動の意味が見えてきます。


行動には4つの機能があります

行動には必ず理由があります。 ABAでは、行動の機能を次の4つに分類します。

  • 物や活動を得るため(要求)

  • 人の注目を得るため(注目)

  • 感覚刺激を得るため(自己刺激)

  • 嫌なことを避けるため(逃避)

例えば「飛び出す」という行動ひとつをとっても、

  • 好きなものを取りに行きたい(要求)

  • うるさい音から逃げたい(逃避)

といったように、背景はまったく異なります。

行動の機能が違えば、支援方法もまったく変わります。 だからこそ、推測ではなく記録に基づく分析が必要なのです。


支援者が陥りやすい「善意の落とし穴」

研修では、支援者の善意が行動を維持してしまう典型例を紹介しました。

自傷行動をする生徒に対し、優しい先生が「大丈夫よ」と声をかけ背中をさすると、行動は一時的に止まります。 しかし先生が離れると、また自傷が始まります。

これは、

  • 生徒:自傷すると先生が来てくれる(正の強化)

  • 先生:自傷が止まるので声かけを続ける(負の強化)

という相互強化が成立してしまっている状態です。

支援者の優しさが、結果として行動を維持してしまうことは珍しくありません。 だからこそ、支援者自身が「自分の反応が行動を変えている」ことを理解する必要があります。


Aさんの事例:家庭内暴力と登校しぶりの背景にあった“随伴性”

研修で紹介したAさんの事例では、家庭内暴力が深刻化し、緊急入院に至りました。 入院中は問題行動がほとんど見られませんでしたが、家庭では暴言・暴力が頻発していました。

分析すると、

  • 暴力を振るうと母親の指示が止まる(逃避)

  • 暴言を吐くと要求が通る(要求)

という随伴性が成立していました。

つまり、Aさんの行動は「問題」ではなく、環境に対して“機能していた”のです。

支援では、

  • 家庭での記録

  • 家族支援会議

  • デイ・ナイトケアでの観察

  • トークンエコノミー

  • 母親の安全確保と消去バーストへの備え

を組み合わせ、行動の機能を変えていきました。

結果として、暴言・暴力は大幅に減少し、登校割合も改善しました。


Bさんの事例:地域全体で支える仕組みづくり

Bさんのケースでは、家庭・生活介護・グループホームの三者が連携し、

  • ABC記録の共有

  • 支援会議の定期開催

  • 環境調整

  • 予防的支援

を徹底しました。

強度行動障害の支援は、ひとつの事業所だけで抱え込むと必ず限界が来ます。 地域全体で支える仕組みがあることで、支援者の負担は大きく減り、本人の生活の質も安定します。


行動を変える前に、支援者の心を守ることが大切です

研修の最後にお伝えしたのは、次の点です。

  • 行動には必ず理由がある

  • 支援者の反応が行動を変える

  • しかし支援者も人間であり、疲れる

  • だからこそ、チームで支える仕組みが必要

強度行動障害の支援は、支援者のメンタルケアなしには成立しません。 支援者が前向きでいられることが、本人の行動改善につながります。


まとめ:行動の意味を理解することが、支援者と家族を救います

今回のすいれん研修では、

  • 行動の機能を理解する

  • 記録に基づいて支援する

  • チームで支える

  • 家族支援を組み込む

という強度行動障害支援の基本を、事例とともにお伝えしました。

行動の意味を読み解くことは、支援者の負担を軽減し、家族の安心につながり、本人の生活の質を高める第一歩です。


強度行動障害の支援でお困りの方へ

ABC研究所では、施設・学校・家庭へのコンサルテーションを行っています。 行動の分析や支援方法の整理が必要な場合は、お気軽にご相談ください。

▶ ご相談・お問い合わせはこちら   https://www.abclab15.com/contact/

支援者が前向きに、家族が安心して、本人が穏やかに暮らせるように。 そのための一歩を、これからも一緒に考えていきたいと思います。

 
 
 

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