top of page

【開催報告】令和8年度 第1回ポジティブ行動支援・北九州研修会を開催しました!〜行動の観察と記録の仕方を学ぶ〜

  • 7 分前
  • 読了時間: 12分

障がい福祉の現場や教育・医療の現場で、利用者様の「困った行動」に直面し、どのように関わればよいか悩んだ経験はありませんか?私たちは、そのような現場の課題に対して、応用行動分析(ABA)の理論に基づき、本人の生活の質(QOL)を向上させるためのアプローチ「ポジティブ行動支援(PBS)」を学び、実践し、繋がるネットワーク作りを目指しています 。  

令和8年5月22日(金)、ウェルとばた・6ABにて、令和8年度初となる第1回「ポジティブ行動支援・北九州」研修会を開催いたしました 。  

今回は、その熱気あふれる研修会の様子を、当日使用された貴重な資料や具体的な事例を交えながら、余すところなくお届けします!


1. 満員御礼!51名の熱い支援者が集結

2024年の発足以来、着実に歩みを進めてきた「ポジティブ行動支援・北九州」 。令和8年度の幕開けとなる今回の研修会には、なんと51名もの方々にご参加いただきました。  

特筆すべきは、受講者の半数以上が昨年度の研究会には参加されていない「新規の申込者」であったことです。障がい福祉サービス事業所をはじめ、学校関係、医療関係、そして障がい児者の福祉に高い関心を寄せる方々が、一堂に会しました 。  

「ポジティブ行動支援(PBS)を基礎から学びたい」「現場の支援を少しでも良くしたい」という、北九州近郊の支援者の皆様の熱い想いと関心の高さがひしひしと伝わる、最高のスタートを切ることができました。


2. 講師紹介と令和8年度のロードマップ

今回のメイン講師(発表者)を務めたのは、ヘルパーまほろステーションのサービス提供責任者であり、ポジティブ行動支援・北九州の代表でもある髙村壮士氏です 。  

講師プロフィール:髙村 壮士 氏

髙村氏は、社会福祉事業団や社会福祉法人の大規模施設で指導員として勤務された後、小規模共同作業所での経験を経て、令和4年4月にNPO法人さんぽを設立 。さらに令和8年4月には合同会社サンステップを設立し、両法人の代表を兼務しながら現場の最前線で活躍されています 。 また、北九州市障害者自立支援協議会「支援の質向上推進会議」の構成員や、AJKEN「行動援護専門的カリキュラム検討委員」も務めるなど、地域における障がい者支援の質向上のために多角的な活動を行っています 。  

本研修会は、専門性と実践性を担保するため、以下の強力な布陣による監修と、専門書籍を参考にして組み立てられています 。 

 

  • 監修

    • 今本 繁 氏(合同会社ABC研究所 代表 / 行動エンジニア)   

    • 黒木 八重子 氏(北九州市発達障害者支援センターつばさ)   

  • 主な参考資料

    • 令和7年度ポジティブ行動支援・北九州 講義資料   

    • 『行動変容法入門[日本語版第2版]』(レイモンド・G・ミルテンバーガー著、二瓶社)   

    • 『強度行動障害のある人の「暮らし」を支える』(特定非営利活動法人 全国地域生活支援ネットワーク監修、中央法規)   

    • 『ポジティブな行動支援〜看護・福祉・教育職をめざす人のABA入門〜』(今本繁著、ふくろう出版)   


令和8年度 年間スケジュール

本研究会は、単発の研修ではなく、年間を通じて体系的にPBSを学べるよう、全6回のプログラムを構成しています 。今回の「第1回」を皮切りに、以下のスケジュールで進行していきます 。  

回数

テーマ

内容のポイント

第1回

ポジティブ行動支援とは(※今回)

行動の観察と記録の仕方   

第2回

行動のしくみを考える

強化の原理について学ぶ   

第3回

なぜその行動が起きるのか

行動の機能的アセスメントの理解   

第4回

望ましい行動を増やす方法

分化強化の具体的なアプローチ   

第5回

新しい行動を教える方法

課題分析の手法をマスターする   

第6回

実践報告

PBSのアイデアを活用した実際の事例共有   

年間を通して受講することで、点と点が線になり、現場で実際に使える強力な支援スキルが身につく設計となっています 。  


3. 講義セッション:PBSの理念と「行動」の捉え方

研修会の前半は、髙村氏による講義が行われました 。初めてPBSに触れる新規参加者の方々にも「非常にわかりやすい!」と大好評だった、そのエッセンスを詳しく解説します 。  


ポジティブ行動支援(PBS)とは?

PBS(Positive Behavior Support)とは、一言で言えば「困った行動を力ずくで排除するのではなく、本人の望ましい行動を増やすことで、結果的に困った行動を減らしていく」というアプローチです 。 その根底には、心理学の一分野である応用行動分析(ABA:Applied Behavior Analysis)の理論があります 。  

PBSが大切にする3つの視点
1. 排除ではなく、獲得:問題となる行動を叱ったり禁止したりするのではなく、それに代わる「適切なコミュニケーションや行動」を教えます 。
2. 環境調整の重視:本人の「やる気」や「性格」のせいにするのではなく、周囲の環境(空間、手順、声かけの方法など)を本人が過ごしやすいように整えます 。
3. 長期的な生活の質(QOL)の向上:目先の行動をコントロールすることではなく、本人が長い人生を豊かに、自分らしく暮らしていけるようにすることを最終目標とします 。  

応用行動分析(ABA)の5つの特徴

PBSの基盤となるABAには、支援を進める上で非常に重要な5つの特徴があります 。  

  1. 行動に焦点を当てる:「心の中」や「障害の特性」といった目に見えないものではなく、目に見える「行動」そのものを見つめます 。  

  2. 行動原理に基づく:行動がなぜ起こり、なぜ続くのかという、科学的に実証されたルール(原理)に則って考えます 。  

  3. 現在の環境事象を強調する:過去のトラウマや変えられない事実に悩むのではなく、「いま、ここ」にある環境の中で変えられる部分を探します 。  

  4. 手続きを正確に記述する:誰がやっても同じように再現できるよう、支援の手順を明確に言葉にします 。  

  5. 日常場面でも実施できる:特別な訓練室だけでなく、グループホームや作業所、家庭などの普段の生活の場でそのまま活用できます 。  


支援の第一歩:「行動」を具体的に定義する(人形テストと客観テスト)

PBSを実践する上で、私たちが最初に行う最も重要なステップが「行動の観察と記録」です 。しかし、ただ漫然と見ているだけでは、正しいデータは集まりません。講義では、行動を正しく捉えるための2つのテストが紹介されました 。  

  • ① 人形テスト(具体的に記述する)

    • 「あの人はやる気がない」「朝の支度をしない」というのは行動ではありません 。これらはスタッフの主観や評価です 。人形テストとは、「人形(ロボット)にその通りにさせることができるか?」という基準です 。「朝の支度をしない」ではなく、「朝の支度をせず、ゲームで遊び続ける」と記述して初めて、目に見える具体的な行動になります 。  

  • ② 客観テスト(誰が見ても一致する)

    • 「多動で目が離せない」という表現も、人によって「目が離せない」の基準が異なります 。これを、「家から飛び出す」と記述すれば、Aさんが見てもBさんが見ても「飛び出したか、飛び出していないか」が一致します 。  

このように、「具体的」かつ「客観的」に行動を定義することが、チーム全体で同じ目線に立つための大前提となります 。  


4. 武器を手に入れよう:2つの記録の仕方

行動が定義できたら、次はいよいよ記録です 。今回の研修では、現場で強力な武器となる「スキャッタープロット」「ABC記録」という2つの手法が提示されました 。  


① スキャッタープロット(散布図)

スキャッタープロットは、「その行動が、いつごろ、どのくらいの頻度で起こっているのか」を視覚的に明らかにするための時間軸の記録用紙です 。  

  • 方法:1日の時間帯(1時間ごとなど)を縦軸、日付を横軸にした表を用意します 。ターゲットとする行動(例:他害、自傷、失禁など)が起きた時間帯に、チェックマーク(✓)を記入していきます 。  

  • メリット:これを1〜2週間続けると、「なぜか毎日、10時〜11時の間にだけ行動が集中している」「午後は全く起きない」といった【時間帯のパターン(傾向)】が、一目で浮かび上がってきます 。これにより、ピンポイントでの対策が立てやすくなります 。  


② ABC記録

スキャッタープロットで「いつ」起きるかが分かったら、次はABC記録を使って「なぜ(どんな文脈で)」起きるのか、行動の機能を分析します 。 行動を以下の3つの要素に分解して記録します 。  

  • A(Antecedent:先行事象):行動の直前の刺激、状況、出来事   

  • B(Behavior:行動):客観的に定義された、本人の具体的な行動   

  • C(Consequence:結果事象):行動の直後に、環境や周囲に起きた変化   

研修で紹介された具体例   

  • 【A】先行事象:利用者のAさんが、一人で部屋にいる   

  • 【B】行動:大声で泣く   

  • 【C】結果事象:それを見た職員が、心配してそばにやってくる   

このABCの流れを見ると、Aさんにとって「大声で泣く(B)」という行動は、「職員にそばに来てもらう(C)」という目的(機能)を果たしている可能性が高い、と推測することができます 。このように、「行動の目的(機能)を正しく理解すること」が、次の環境調整や新しい行動の習得に繋がっていきます 。 


5. 実践事例から学ぶ:Aさんの「活動室での排尿行動」へのアプローチ

「理論はわかったけれど、実際の現場でどう使うの?」という受講者の皆様の声に応えるように、大変説得力のあるリアルな事例が紹介されました 。  

事例:Aさん(30歳・男性)

  • 特性:重度知的障害・自閉症、障害支援区分6、行動関連項目10点以上(生活介護サービスを利用)   

  • 課題:令和8年3月頃から、利用中に活動室で立ったまま排尿(失禁)してしまう行動が急増 。 

     

データの収集と評価(ベースライン期から支援期へ)

支援チームはすぐに感情的な対応をするのではなく、まずスキャッタープロットを用いて排尿行動の頻度を正確に記録し始めました 。 この、支援を始める前の「普段のありのままの状態」を測定する期間を「ベースライン期」と呼びます 。  

データに基づき、チームで分析を行い、以下の「新たな2つの支援の工夫」を計画・実行しました 。  

  1. 支援①(視覚的支援と達成感): ワークや作業について、1回終了するごとに本人がシールを貼れるようにした。さらに、その頑張りが目に見える形でわかるよう、連絡帳と一緒に自宅へ持ち帰ってもらう仕組みを作った 。  

  2. 支援②(午前中の活動の充実・環境調整): スキャッタープロットから午前中の時間帯へのアプローチが有効と判断し、午前中の活動をより充実させるため、追加での買い物、ドライブ、キャッチボールなどを積極的にスケジュールに取り入れた 。  

劇的な効果がデータで証明された!

支援の開始後、チームは記録の手を緩めず、データの集計を続けました 。支援を開始した後の期間を「支援期」と呼びます 。  

スキャッタープロットから集計された、Aさんの月ごとの失禁頻度の推移は以下の通りです 。  

  • 令和8年2月:1回   

  • 3月(ベースライン期)6回(急増)   

  • 4月(支援①開始初期):7回(一時的な増減を経て、支援②へ)   

  • 5月(支援②浸透後、2週目時点)1回(劇的に減少、5月2週目はなんと「0回」に!)   

グラフを見ると一目瞭然ですが、3月後半(ベースライン期)に週3回ペースで起きていた失禁が、4月から2つの支援を段階的に導入したことで、5月に入ると急激に右肩下がりに減少し、最終的には0回を達成しています 。  

参加者の声「感覚的な『良くなった気がする』ではなく、データとしてグラフで効果が示されるので、自分たちの支援が正しかったと自信を持てる。非常にわかりやすく、鳥肌が立ちました!」

データを用いてチームで客観的に話し合うことで、職員間の共通理解が生まれ、一貫した支援が可能になるという、PBSの最大の強みが証明された事例でした 。  


6. 熱気あふれる演習セッションと総括

講義の後は、参加者全員が主体となる「15分間の演習(グループワーク)」が行われました 。  

各テーブルで自己紹介を交わした後、「いま、自分が支援している現場で実際に困っている行動」について、ざっくばらんに意見交換を行いました 。 半数以上が初対面の新規参加者という環境でしたが、同じ地域で障がい福祉に携わる仲間同士、悩みの共感や「うちの事業所ではこうしている」といった具体的なアイディアが飛び交い、どのテーブルも非常に活気ある笑顔と熱気に包まれていました 。  

その後、代表的なグループによる発表が行われ、最後に助言者の今本繁氏による深い解説と、スーパーバイザーの黒木八恵子氏による素晴らしい講評をいただき、本日のゴールである「PBSの考え方を知る」「観察と記録を学ぶ」「演習で交流を図る」をすべて最高の形で達成することができました 。  

閉会後の30分間の片付け時間中も、会場のあちこちで残って熱心に質問や感想を語り合う「交流の輪」が続いていたのが、とても印象的でした 。  


7. 次回予告!第2回研修会のお知らせ

今回の熱気そのままに、早くも第2回「ポジティブ行動支援・北九州」研修会の開催が決定しております! 第1回に参加できなかった方、今回学んだ「観察・記録」のその先ステップへ進みたい方、どなたでも大歓迎です 。  


🌟次回の見どころ&宣伝文句!

「なぜ、あの行動は繰り返されるのか?」その秘密が、ついに明かされる!第1回で学んだ「観察と記録」で行動の形が見えてきたら、次は「行動が起こるしくみ(メカニズム)」をハラ落ちさせる番です! なぜ叱ってもやめないのか? なぜその行動はエスカレートするのか? その鍵を握るのが、行動分析学の核心である「強化の原理」です 。 次回は、現場での実践経験豊かな白石博之氏(株式会社エスティーロ IROHA Style)を新たな発表者に迎え、今本氏・黒木氏の超豪華な専門家陣によるナビゲートのもと、明日からの支援が180度変わる「しくみの理解」へとあなたを誘います 。  行動の理由(ワケ)がわかれば、支援者のイライラは「なるほど!」に変わる。 あなたの現場の『謎の行動』を、科学の視点で一緒に解き明かしてみませんか? 集合形式だからこそ味わえる、地域の支援者同士の生々しくも温かいネットワークに、あなたもぜひ飛び込んできてください!   

◎ 第2回 開催概要

  • 日時:令和8年7月17日(金) 18:30〜20:00(受付開始・講義演習含む)   

  • 場所:ウェルとばた・6AB(北九州市戸畑区汐井町1-6)   

  • テーマ行動のしくみについて考える 〜強化の原理   

  • 【発表者】:白石 博之 氏(株式会社エスティーロ IROHA Style)   

  • 【助言者】:今本 繁 氏(合同会社ABC研究所)   

  • 【スーパーバイザー】:黒木 八恵子 氏(北九州市発達障害者支援センターつばさ)   

  • 対象者:障害福祉サービス事業所・学校関係・医療関係、その他障がい児者の福祉に関心のある方   

  • 参加費無料   

  • 備考:集合形式(対面)での開催です。オンライン配信はございません 。  


📝 お申し込み方法

お申し込み締め切りは、7月10日(金)までとなっております 。 ただし、定員を超えた時点で申し込みを締め切らせていただきますので、お早めのお手続きをおすすめいたします 。  

下記のGoogleフォーム(URL)より、必要事項をご記入の上お申し込みください 。  

👉 [第2回研修会 お申し込み用Googleフォームはこちら]https://forms.gle/JsRXGNea8xiacvi38 )   

 
 
 

コメント


特集記事
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square

お問い合わせ先

〒806-0028

日本福岡県北九州市

​八幡西区熊手2-3-27

電話&ファックス

TEL:093-616-1335

FAX : 093-330-4239

メール

simamoto66@gmail.com

​担当:福田

合同会社

  ABC研究所

 

代表:今本 繁

  • Facebook Social Icon
  • Twitter Social Icon
  • Google+ Social Icon
  • YouTube Social  Icon
bottom of page