昔、構造化を学んだ人が陥りやすい罠

 私の自閉症支援の学問的背景は、大学院で初めて応用行動分析を学び、次にノースカロライナ州のTEACCHセンターで学んだことが元になっています。今、日本でもTEACCHで開発された「構造化による指導」が主にテクニックとして広まっていると思います。ただ、この構造化も伝言ゲームのように広まったせいか、各地で誤解されていることが、あるなあと思います。

 誤解されて実践されている施設で大きな弊害は、「教える発想がない」ということです。構造化は、自閉症の人が落ち着いて過ごしたり、行動するための手段であり、それを土台に、身辺自立や勉強を教えたり、仕事を身につけたり、生活を向上させたりということが目標になると思います。構造化は、支援の土台であって、目的や教育カリキュラムでも、支援目標でもありません。

 重度の成人の施設では、構造化して行動が落ち着くことで止まっていることが多いですし、幼児や学童の施設でも、個別の蛸部屋はいっぱいあるけど、集団で学ぶ場がなかったり、先生が1対1で教える場すらないこともあります。おそらく、この個別の蛸部屋の多さがアンチTEACCHの人の批判の対象の1つだと思うのですが、それはそうだなと思います。

 またスケジュールに沿って動くことも大事ですが(これもロボットみたいと批判の対象になっています)、自分で選んだり、自発的に意思を伝えたりも重要です。表出のコミュニケーション支援の弱さも、構造化の罠の1つではないでしょうか。

 私たちの目標は、障害のある人ない人が、なるべく制約を少なくして共生すること、その人らしく生きる社会です。TEACCHもそれを目標にしています。もちろん障害特性を配慮した工夫や手立てが必要で、それが構造化だと思います。その人らしく生きると言っても、周りの人に過度に迷惑をかける行動は慎まないといけませんから、成人でも新たに学ぶことはいっぱい出てきます。

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