

見通しが持てないことには予告が大切
あるアスペルガー症候群の幼児のお子さんは、支援者と母親が話しているだけでも癇癪を起しますし、玩具で遊んでいる時に、他のお友達が寄ってきて玩具を取り上げようとすると、その場にひっくり返って「ダメダメ」とわめき散らし、近くにいるお母さんを蹴り飛ばそうとします。圧倒的に力の差があるお母さんは、手を持って力で抑え込み、なんとかなだめる状態です。 自閉症のお子さんのお子さんは見通しが持てないことを極端に嫌います。前者の場合であれば「なんでこの人は、突然お母さんに話しかけるのだろう?話はいつまで続くんだろう?」後者であれば、「何で僕のおもちゃを他のお友達は勝手に取っていくのだろう?」ということだと想像できます。でもこれは予想でしかないので実際にそうかどうかはわかりません。 その支援者は、ある日、お母さんに話しかける前に本人に「お母さんと話していい?」と聞くと「うん」と返事が返ってきたので、さらに「お母さんと話している間待てる?」と聞くと「待てる」と答えました。そこでお母さんに話しかけると、話している間一人で遊んで待ってくれていました。 また通常の遊びに飽きて

手順書と違う
ある児童発達の事業所で手洗いに時間のかかる子どもがいました。その子は、手順書をよく見てその通りに洗っているのですが、どうも納得がいかないようです。その子に聞いてみると「なかなか緑が出てこない」と言います。よく見ると手順書の石鹸は緑なのに、実際に置いているポンプ式の石鹸は白でした。


台に登るのを止めさせる
幼児さんが台に登るのをどうやって止めさせるかということに関して、支援者間で話しています。もちろん体罰や強い叱責は、使えないので、それ以外で行動をやめさせるにはどうしたらいいかについて話し合っていました。 元幼稚園教諭の人は「子どもが台に上がったらすぐに目の前で手を叩いて大きな音をたててやめさせます」と言いました。これは大きな音が嫌子として機能していれば、効果があるかもしれません。その場合、子どもはすぐに泣くでしょうからフォローが必要です。他の人は、手で×マークを作ったり、「ダメ」と言って怖い顔をするのはどうでしょう?と言いました。これは×マークが嫌子として機能してなければなりません。怖い顔は嫌子と考えられるのですが、一部の子どもは面白がってしまうかもしれません。そうすると好子として機能しているので逆効果になってしまいます。支援者には、毎日鏡の前で怖い顔をする練習をして演技力が求められるかもしれません。 おそらく×マークは生得的に嫌子ではなかったと思われますので後天的に嫌子として習得されたのでしょう。通常であれば、×マークと怖い顔や大きな音のような


聞き分けの良い大人でいることは良いことか②
さて実際にご夫婦で合意に達したことはというと・・・ まず、ご飯の間にテレビを消すというプランA案は、夫婦でお互いに合意が得られず却下されました。 プランB案は、お父さんと子どもの晩ご飯を食べる時間をずらすというものです。お父さんは、少し遅い時間に会社から帰宅するのですが、お母さんは子どもを待たせて一緒に食べるようにしていました。お父さんも、食べないで待ってないといけないというこだわりはありませんでしたので、子どもは早めに食べるということでテレビのチャンネルの問題はなくなりました。 それから母親への噛む行為についてですが、以前までお母さんは子どもが噛みにやってきてから抱っこをしていたそうです。これでは噛む行動が強化され、抱っこをする要求にもなっていました。またわざと母親の手を噛ませた後に子ども自身の手を噛ませて「痛いでしょ!」と伝えていました。もちろん、こういうやり方でも効果があれば構わないのですが、案の定うまくいっていませんでした。お母さんは、自分で痛いことがわかれば母親を噛まなくなるだろうという目論見でした。しかし、自閉症のお子さんは相手の気持

聞き分けの良い大人でいることはいいことか?
あるご家庭のお父さんは、ご飯の間はニュースを見ることに決めています。その家には3歳の知的遅れのない自閉症のお子さんがいて、ご飯の時は撮り貯めておいた子ども番組のビデオを観たがりました。お父さんはご飯の間は絶対にニュース番組を見るというルーチンを変えたくないので、子どもはいつも泣きわめいていました。お母さんは、夫に「あなた、子どもが観たがっているんだから、少しは変えてあげたら」と言いますが、頑として聞き入れません。困った夫だなと内心思っています。また休みの日は、夫に子どもを預けて買い物に出かけるのですが、お母さんが「ただいまー」と言って帰ると子どもが抱きついて叩くのです。 このエピソードを聞くと、多くの方はお母さんに同情したくなるでしょうし、少しは子どもに合わせたらと思うと思います。私は、どちらかに肩入れをするつもりはないのですが、子どもに合わせることに対してちょっと違う見方をしています。その理由として、第一に子どもが癇癪を起した際に、子どもの要求を叶えてしまうと癇癪を強化してしまうかもしれません。第二に、同じ状況でお父さんは子どもの要求を聞かない


自制心と幸せについて
セルフコントロール(自制心)について行動理論では、遅延の少ない小さな強化子と、遅延の長い大きな強化子間の選択行動のうち、後者の行動を選ぶことと言っています。反対に前者の行動を選ぶことを衝動性と言います。衝動性の問題を簡単に言うと“目先の小さな利益にとらわれる(あるいは小さな失敗を見過ごしにする)と長い目で見て大きな利益を失う(あるいは大きな失敗を招く)ことになる”ということかもしれません。 セルフコントロールの研究は、行動経済学における消費者の行動やアルコールや薬物などの依存症、発達障害者の衝動性の問題など広い分野で応用されています。私の専門は自閉スペクトラム症を始めとする発達障害の療育です。発達障害の人の症状の1つに衝動性があり、それが対象者の損や不適応を招いていることが多いと思われます。 先日、朝の通勤時間に自転車で横断歩道の青信号を待って横断しようとしたら、すでに横断歩道の半分に車体を割り込ませていた車の運転手が、私の進行を遮りがなら睨みを利かせてこちらを見てさっと通り過ぎていきました。「そんなに急いで何か得なことがあるのだろうか」と横目で