物理的構造化の説明を乗る電車を間違えた!? 物理的構造化との絡みで平成27年

今日は、某施設で行う研修の初日。準備万端整え、時間的にも余裕を持って出発したにも関わらず、乗換駅の西小倉駅の1番線から日豊本線で下曽根駅に向かうつもりだった。本を読んでいたが、南小倉、城野と続いて、なかなか下曽根駅に着かない。外の景色は田舎の風景に変わっていて、ふと間違えに気が付いた。降りるとそこは無人駅。スマホのナビで調べると、日田彦山線に乗って別方向に向かっていた。すぐにタクシーでも捕まえて、施設に向かいたかったが、何もない無人駅。すぐに道路まで出て、しばらく行くとバスが通っていたのでひとまず、人通りのある守恒に出て、そこでようやくタクシーを捕まえたのが、研修開始の時間だった。すぐに施設に電話してお詫びを入れ急いで向かったが、夕方の渋滞に巻き込まれて30分遅れでようやく到着した。 今日の研修のテーマは、自閉症スペクトラムの特性と物理的構造化による支援だった。物理的構造化の基本アイディアはこうだ。ある場所で2つ以上の違う活動をすると混乱が起こりやすい。逆にある活動を行う場所を1つに決めると混乱は少なくなる。つまり、活動とそれを行う場所を1対1に決めてしまうといいと言うわけだ。事例で紹介しよう。 ある学校の先生が自閉症の症状の重い中学の生徒を学校の個室で個別指導されているビデオを見せていただいた。先生と勉強している、その生徒が座っていたのがソファで、その部屋には長めのソファしか座れるものが置いていないのだという。 その男子生徒は、時々寝転んだり、のけぞったりしながら勉強を行っていた。そして合間に入る余暇でCDの音楽を聴いていた。先生は、生徒はいつもこんなでどうしたらちゃんと座りますかね?と尋ねた。そこで別の施設職員の人が、ソファは休憩の時に使って、勉強では普通の学校の椅子を使ってはどうですか?と助言された。 私たちも休憩してリラックスする時にソファに座る事が多い。自宅だとソファに腰掛けると寝転んだり背中をつけて深く座ったりしてリラックスする。”ソファ”という場所や刺激は、”リラックスする”行動を引き出しやすい。逆に”勉強用の椅子”という場所や刺激は、”勉強や作業をする”という行動を引き出しやすい。生徒が”寝転ぶ”という行動は、ソファという同じ場所で、勉強と余暇の両方の活動を行うことで生じた混乱と解釈でき、施設職員さんの助言は、ソファで余暇を、勉強椅子で勉強をというように場所と活動を1対1対応にする物理的構造化のアイディアそのものである。 物理的構造化は、場所を”仕切りで区切ったり囲うもの”と思っている人が多い。これは、構造化に反対する人の中だけでなく、構造化による支援を積極的に進めている人たちでさえも大きく誤解されていることの1つだ。 しかし、仕切りや衝立の使用は、必要に応じて注意散漫を予防したり、境界を分かりやすくするために行う2次的なものである。 物理的構造化の説明をした後、グループに分かれてそれぞれの実際の事例でディスカッションをしてもらった。あるグループでは、自閉症の女性利用者が作業所の着替え室でのエピソードを話してくれた。その人は、普段、自分のロッカーで着替えを行い、着ていた衣服はハンガーにかけて出てきている。しかし週末は作業着を畳んでバッグに入れて持って帰ってもらいたいのだが、ハンガーにかけたままにするか、作業着を丸めてバッグに入れてしまい、どうしても畳もうとしないという。

さて、この物理的構造化のアイディアを応用して、作業着を畳む行動を促すためにどうしたら良いだろうか?職員の出した答えは、”畳むための台”を設けるということだった。ロッカーという場所や刺激は、”服を着替える”や”衣服をハンガーにかける”という活動は引き出してくれているが、”衣服を畳む”という活動は、週一回で別の活動だ。だから、場所も別に台を設けると畳む行動も自発されやすいのではないか?というのは、妥当な結論だと思われる。たったこれだけ?と思われるかもしれないが、このように簡単ででシンプルな支援が、自閉症スペクトラムの人にとって、どれだけ助けになるか?しかし、これが本当にうまくいくのかどうかは、実践して検証してみなければならない。1ヶ月後の訪問までにそれを実践して検証することが宿題として残されているので、結果を聞くことを楽しみにしている。

さて冒頭で乗る電車を間違えた私のエピソードだが、これも物理的構造化と絡めて考えてみよう。私は1番線に乗れば、日豊本線で目的地である下曽根に着くと思こんで表示を見ないで電車に乗ってしまった。しかし、それは日田彦山線という別ルートの電車だった。この間違いは、同じ番線に2つの違うルートの電車が走っている、つまり同じ場所に2つの活動があることで起こった混乱と捉えられるかもしれない。ちなみに日本の鉄道は、 ある線路には登り下りなど特定の路線が割り当てられていることが多い。しかし、鉄道発祥の地英国の大きなハブ駅では、線路に特定の路線が割り当てられていることは少なく、時々刻々と変わってしまう。だから、目的とする路線が、どの番線に入るのかを電光掲示板で確認して乗らなければいけない。電光掲示板の前には、いつも人だかりができている。日本の鉄道のダイヤ調整と時間調整がいかに優れたシステムであるかを実感できる。さらに構造化に絡めて英国の鉄道の例を考えよう。英国の鉄道のように物理的構造に一貫性がない場合、ちょっと複雑だが電光掲示板のような別の視覚的なシステムが必要になってくる。 物理的構造化よりも、臨機応変に振舞うために必要なものが視覚的構造化と言えるだろう。次回から、日課、活動、教材道具の構造化の話に展開する予定だ。

ABC研究所では、応用行動分析で発展してきた支援法のみでなく、構造化や視覚支援など他で開発された支援法についても、行動科学の切り口で皆さんにご紹介します。詳しくは、ホームページの情報をご覧ください。 http://www.abc-lab15.com/

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(同) ABC研究所は、自閉症スペクトラム障害 (ASD) に関する支援法について普及や啓発を行うことを使命にしています。自閉症支援は、応用行動分析 (ABA) とTEACCHプログラムに基づいた科学的方法論を基にしています。ABAは、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の支援についてアメリカ連邦公衆衛生局によって科学的に効果が確認されている方法論として推奨されています。TEACCHは米国ノースカロライナ大学と州政府が中心となって州全体で取り組んでいる自閉症児者の包括的な支援制度で、そこで開発された構造化や視覚的支援などの方法論は世界的な自閉症支援の標準となっています。ABC研究所は、その使命を果たすために、自閉症スペクトラムの支援法に関する研修・セミナー、施設・学校でのコンサルテーション、コミュニケーションや学習教材の研究開発、個別の療育や相談を行っています。

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