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認知行動療法セミナー平成27年8月16日大分大学医学部

これまでの仕事では、主に週末に仕事が入っていて一般の研修会には参加できなかったのですが、転職をきっかけに研修会に参加できるようになりましたので、夏休みということもあり参加してきました。なるべく専門分野であるABA以外のものを勉強しようと思い、堀越勝氏のセミナーに参加しました。普段はノンバーバルなクライエントを対象としていますが、今回のセミナーはバーバルなクライエントを対象としていました。専門分野を超えて大変勉強になりました。 非常に濃い中身ですべてを消化しきれていません。ところどころ2人1組で行う演習が入っていて受講者を飽きさせないようになっていました。最初の演習は、ノンバーバルな反応が相手に与える影響を探るというものでした。カウンセリングのトレーニングでは定番の内容ですが、実際にやってみると新たな発見がありました。演習後、堀越氏から解説がありました。 a)目線を合わさないで話す:クライエントは怒りを感じていることが多く、嫌なことを伝えている。 b)相手が話し終わらないうちに話す:カウンセリングでは、最後まで相手の話を聞くことが鉄則。 c)話し中に他所に目線を送る:相手に関心を向けていないと思われるし、説得力を持たない。 d)うなづかないで話を聞く:相手に共感する上で一番ポイントになる。会話のリズムを変えられる。 せっかちな私は特にb)は普段の会話では守っていないことがあると反省しました。d)もタイミングを外してしまうことが時々あるようです。このような癖に気が付くためにも臨床家は、クライエントに同意を得て会話の内容をビデオに録り見直して、改善するように勤めるべきと話がありました。

まず認知行動療法(CBT)の問題の捉え方の説明がありました。大きく2つに分けられます。 a)条理的な問題:自分の蒔いた種によって起こる問題(例.勉強しなかったから試験に落ちる) b)不条理な問題:偶発的に起こる他人の行為や天災による問題(例.通り魔に刺される、震災による被害) a)の問題に対して、変えられると考えれば、試練をバネにして責任を果たし成長するし、変えられないと考えれば受け入れて別の選択肢を探ることで成長できます。 b)の問題に関して二十歳の時に骨肉腫で片足を切断した陸上選手を目指していた青年の話をしてくれました。彼は堀越氏が米国の大学院時代にルームメイトだった青年でした。5年間は絶望を感じ何もできずにいたそうです。でも25歳になって医師になろうと決意して、今は小児がんの子どものために医師として仕事をしているそうです。その5年間は何だったのかと問うと、喪に服する期間だったと答えました。失って戻ってこない、変えられない現実に直面したとき、失ったものを悲しむことで成長をすることできます。 a)とb)のいずれの問題も、見ないようにする。自分のせいにしたり、他人を責めるような逃避は、悪循環を生み、怒りやうつ状態、不安を引き起こします。CBTに限らず、どんな心理療法も逃避ではなく、問題に直面化させることは共通しています。

CBTのアプローチの概要は、まずクライエントの感情を受け入れるところからスタートします。 うつを例に3つの分野の解説がありました。(ちなみにABAでは3つともすべて「行動」という捉え方をします) a)行動分野:欠勤、遅刻、作業効率が悪いなど b)認知分野:自信がない、破局思考、やる気がでないなど c)身体分野:疲れる、眠れない、食欲がない、食べ過ぎなど 介入法は、それぞれ3つあります。症状によってどこから変えるのがいいかコツがあるようです。重度のうつの方の場合、行動から変えるのが一番介入しやすいとのことです。パニック障害など身体症状が重度の方は呼吸法など身体の使い方から入るのが良いようです。 a)行動的介入:行動活性化、暴露介入、問題解決法 b)認知的介入:認知再構成、心理教育、注意訓練 c)身体的介入:リラクゼーション、身体感覚暴露 介入によって元のスキルレベルに戻れた場合に回復と考えられます。しかし時間がかかればかかるほど社会的スキルなどは遅れが生じるようになります。不登校や引きこもりなどが長くなると社会的スキルが遅れるのと対応しているように思います。また発達障がいが併発する場合は、スキルの習得を積極的に図っていく必要があります。

認知行動療法(CBT)もいろんな成り立ちがあるわけですが、堀越氏の紹介している方法論は、A.ベックの認知療法をベースにしているようです。ベックは当初50年代、精神分析から臨床をスタートしました。フロイトの創始した精神分析は、人間の悩みとなっている考えや感情などは「意識」と呼ばれるもので、その背景に「無意識」があるという仮定の基に精神構造を明らかにしました。悩みの元を探り、改善に導くためにはこの「無意識」に関心を向ける必要があります。無意識を分析する方法の1つが夢分析です。無意識の問題を意識化することで精神的な悩みから解放されるというのが精神分析のアプローチです。 しかし、ベックは夢分析による精神分析のアプローチはうまくいかないと自覚するようになって、最初から「意識」からアプローチするようになったのが、認知療法の始まりです。私が、友達に勧められて最初に臨床心理の書籍で手にしたものが、ベックの認知療法でした。 そして広島大学の聴講生として研究室の門を最初に叩いたのが、日本の精神分析の大家である鑪幹八郎氏だったので、なんとなく懐かしい感じがしました。 堀越氏は、精神分析とCBTの違いを紳士服店をたとえにこう説明しています。オーダーメイドが精神分析で、量販紳士服店がCBTであると。 様々な臨床心理アプローチの分野や心理学の分野から発展してCBTと似たようなアプローチをとるようになってきたものが紹介されていました。ABAの分野では、S.C.ヘイズ博士のACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)が紹介されていました。日本では、同志社大学の武藤崇氏らがACTの研究会(ACT Japan)を主宰して頑張っています。http://www.act-japan-acbs.jp/index.html

共感するだけでは具体的に前に進めません。そのために使うのが質問法です。質問によって相手の言葉を引き出す演習をしました。3分の時間制限ですぐに言葉を引き出せる人、なかなか引き出せない人がいました。 「甲子園」を引き出す:質問「猛暑の夏が続きますね」 「完璧主義」を引き出す:質問「兄弟いますか?」 「幽霊」を引き出す:「安保の問題が心配ですね」 私たちがコミュニケーションで使える道具は2つあるそうです。 ・言い切りstatement「STAY」 ・質問question「MOVE」 裁判などで検事が使う誘導尋問ではなく、あくまでもクライエントの利益で動かねばなりません。 質問には3つの機能があるそうです。クライエントの訴え「最近ずっと調子が悪くて・・・」を例に出します。 ①話題の焦点づけ:「好子が悪いときどんな症状がありますか?」 ②不明な点について探索する「調子が悪いという証拠がありますか?」 ③相手を動かす「lこれまでどんな対策を取りましたか?」 質問は3つのやり方があるそうです。 受験に失敗し、今からの職探しは無理と言っているクライエントの例で ①開かれた質問:「ご両親はなんておっしゃってるのですか?」 ②閉じた質問:「試験は難しかったですか?」 ③ソクラテス式質問「今からの職探しは何%無理だと思いますか?」 ①は答えにくく情報量は多い。アセスメントの時に使う。 ②は答えやすく情報量は少ない。混乱している人や発達障がいの人に向いている。 ③は開かれていて具体的。問題を焦点付けし考えを整理するのに使う。

ソクラテス式の質問は、 ①感情②身体③考え④行動⑤問題についてより明らかになるような質問のことを言い、パターン化されて気づかない考えなどに気付かせるための質問と言えます。 ソクラテス式質問法のポイント ①焦点を決め、②小さな支持をしながら、③ソクラテス式質問をする 8つのポイントがあるというので語呂合わせを習いました。 す:数値化:1週間に何回くらい? 1から10のうちいくつくらい? ぐ:具体化:もう少し具体的に説明してくれますか? し:証拠探し:そうだという証拠はどんなものでしょう? か:感情の変化    く:口癖・決まり文句 か:慣用句・ことわざ く:比べる・比較 ほ:他の考え(代替案):あなたがカウンセラーだったらどんな助言をしますか? 時間がなくなり、最後の方は説明が足りなかった。 堀越勝氏の著書 ・精神療法の基本:今、ベストセラーだそうです ・ケアする人の対話スキルABCD:練習問題つきです ・感情のみかた:一般の人向け

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