顎を叩く自傷のある成人女性

 今日は北九州市の発達障がい者支援センターつばさ主催の行動障害研修会の最終日でした。前回は、行動を理解するためのABC分析の講義を行い、実際の事例を事業所の方に出していただき、対処法の計画を立てる演習を行いました。その後は、職員の方が事業所に持ち帰り実践を行って今日はその実践結果の報告会でもありました。

 その前に私のコミュニケーション支援の講義があった後に、フロアーから質問がありました。成人施設に勤めていらっしゃる職員の方から、顎を叩く自傷のある女性Aさんの支援について、私が講義の最後の方で話したペナルティの方法が適用できるかどうか聞いてこられました。その職員は、その利用者が自傷を始めたら顎を叩く絵に×マークをつけたものを提示してみたそうです。するとAさんはニコニコしてその絵を見るものの行動は止めなかったと言います。

 まず対応方法を考える前に行動の「機能」を知る必要があります。行動上の問題があると普通は、その行為自体、行動の「型」に注意が行きがちです。人を叩くとか、服を脱ぐとか、頭を打ちつけるというのは全て行動の「型」です。その行為自体はとても忍び難いことではありますが問題の本質を探るには「機能」を知る必要があります。

 機能というのは、行動が環境に与える影響や働きのことです。たとえば、ドライバーの「型」は、金属とプラスチックの柄がついた棒状のものです。しかし、ドライバーは「型」ではなく、その「働き=機能」が重要なのです。その働きは「ネジを外したり、止めたりする」ことです。行動の本質は、型ではなく機能に求められます。

 機能がわからなければ、アセスメントとしてのABC分析の出番ですが、だいたいの予測は職員の方に質問をすればわかるので聞いてみました。するとAさんは職員の様子を伺いながら顎を叩いているとのことでした。「これは①注意引きという機能ですね」と言うと、「無反応でいればいいのですね?」と答えられました。これは消去という手続きですが、職員が徹底してやらないと効果を持ちません。他にありませんか?と聞くと、②周囲の声がうるさい時、③部屋が暑い時、④花粉症で目がかゆい時という答えが出ました。それぞれにどう対応してるか聞いてみると、②個室に連れて行く、③温度を調整する、④病院を受診するということでした。花粉症は今のところないようです。現在、あるのは②と③です。②も③も職員がAさんの様子に気づいて早めに配慮するという対応ですが、これもうまくいかないことがあります。なぜなら、職員も人間なので100%気づいて配慮することは不可能な場合があるからです。これを調整する重要なスキルは、Aさんに自発的な要求のコミュニケーションスキルを持ってもらうことなのです。

 そこで、第1の対処として機能的な代替コミュニケーションスキルを支援することを提案しました。②は「うるさいです」③は「暑いです」という要求を絵カードなどを出すことで支援するのです。絵カードコミュニケーションの指導法は、講義の中で説明したので、施設に帰ってやってみますとのことでした。

 今日は行動障害研修の最終日で市の障がい福祉課の係長が市長名の入った修了証を渡しに来られていました。これまで何年もやってきましたが、市長名を入れた修了証を渡すのは初めてです。来年度もこの研修会は続けて行われますが、来年度の検討事例の応募者を募ったところ、私に質問に来られた職員の方が名乗りをあげました。

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(同) ABC研究所は、自閉症スペクトラム障害 (ASD) に関する支援法について普及や啓発を行うことを使命にしています。自閉症支援は、応用行動分析 (ABA) とTEACCHプログラムに基づいた科学的方法論を基にしています。ABAは、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の支援についてアメリカ連邦公衆衛生局によって科学的に効果が確認されている方法論として推奨されています。TEACCHは米国ノースカロライナ大学と州政府が中心となって州全体で取り組んでいる自閉症児者の包括的な支援制度で、そこで開発された構造化や視覚的支援などの方法論は世界的な自閉症支援の標準となっています。ABC研究所は、その使命を果たすために、自閉症スペクトラムの支援法に関する研修・セミナー、施設・学校でのコンサルテーション、コミュニケーションや学習教材の研究開発、個別の療育や相談を行っています。

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