構造化について
2018年12月上旬は、北九州発達障害者支援センターの構造化を基にした自閉症支援の研修でした。実際に協力してくださる対象者を招いての研修は、受講者の動機付けも全く違いますし、実際に作った教材が役立って使われる様は圧巻です。本当に貴重な機会でした。つばさの職員さんお疲れ様でした。会場を使わせてくれた地元の通園施設にも感謝です。
そもそも構造化とは何か?私はノースカロライナ州のTEACCHセンターに留学してこれまで学んできましたし、大学院で応用行動分析を学んできたので少し外から構造化を眺める観点もあります。まとめると「構造化とは、自閉症の人の特性に合わせて適応を促すための環境上の工夫や取り組み」となると思います。多くの方が誤解され、批判されていることでいうと、構造化自体は、指導の内容でもないし、指導の方法論でもないし、指導プログラムでもない、療育法でもないということです。本人の現状の理解力やスキルに合わせて環境を整え、他の人の手だしや手助けがなくても、自立して行動できるようにすることが、構造化の究極の目標になります。
一方で構造化を取り入れている側の誤解は「構造化していれば全て良し」という面があることかもしれません。環境を構造化して安定していれば、何も変えないとか、ほとんどの活動を個別に取り組む設定にしていて、人との関わりや交流がほとんどないなどです。本人の能力の向上、スキル獲得、新しい行動の習得、発達の促進、般化、対人相互作用、コミュニケーションを考える時には、指導や療育が必要になります。 下の写真はミルクココア作りの1回目の構造化
下の写真は2回目の再構造化の写真です。
1つ例をあげると、1回目は、ココアの袋がそのまま置いてあり自分の力で開けるのが難しかったので、2回目は開けやすい容器に変えています。純粋に構造化のアイディアを適用すると、このような変更が再構造化であり、それで良いのです。
でも、皆さんはいろんな疑問がわいてくるでしょう。練習すれば、自分で袋を開けられるようになるのではないか?手の巧緻性を高めることも大事ではないか?できないことは誰かに援助を要求できた方が良いのではないか?
もちろん、そのような能力の向上は、大切な課題ですし取り組むべきです。しかしいろんな要素を1つの活動に組み込むと混乱を与えてしまうので、個別にスキルの獲得を教える場として、指導者と1対1で取り組む場を作って行います。
また他者と交流する場も作りますが、自由に関わる場だとトラブルばかり起こってしまうようだと、ある程度、枠組みのある活動や場面の設定が必要です。写真はトランプの神経衰弱を数人と大人と取り組む設定です。人と交流するためのルールは、遊びのルールとは別ですので、遊びのルールがわかっている中で社会性のルール(順番に行う、めくったカードを元に戻す、自分の札を見せないようにするなど)を取り組みます。
あと構造化の設定で活動に取り組む時に受講者が混乱することがあります。1つは構造化してるので支援者は一切手を出さず、本人が困っていても傍観してしまうこと、もう1つはその逆で、本人が困っていないことでも、余計な声かけや手出しをしてしまい、本人の自立を無視して保護的に関わる場合です。
完璧に構造化を行い、本人もある程度、スキルや経験がある場合は、支援者が一切手助けしなくてもできることはありますが、それば稀で、低年齢のお子さんの場合は、初めて取り組むことに関しては指導が必要です。この時は、応用行動分析のプロンプト&フェイディングの考えが役立ちます。自立して取り組むことを教える場合に、特にプロンプトの中でも声かけ、言語指示、言語プロンプトは控えないといけません。それ以外の身体プロンプト、身振りプロンプト、モデリングなどを活用します。
構造化をする上でのポイントをまとめてみました
①本人の特性やスキル、置かれている環境のアセスメント
②アセスメントを基に環境の構造化を考えて実行する
③実行してうまくいないところは再構造化する
④自立を教える際にプロンプト&フェイディングを用いる、声かけを控える。
⑤スキルの向上や新しい行動の獲得は、1対1から始める