刺激のない環境が良いとは限らない
- 今本繁
- 2018年7月4日
- 読了時間: 2分
ある知的に重度の自閉症の中学生は、 自立課題をしているときに具材を持って机に何度も打ち付ける常同行動が出始めて、なかなか課題が進まないということを聞きました。パズルをやっているビデオを観させてもらいましたが、確かに時々ピースを机に打ち付けていますが、最後まで完成させていました。「これは私がビデオを撮っているので気になってあまり常同行動をしないようです」ということでした。自立課題をするときは、静かな部屋で机を壁向きにして刺激のないようにしていますとのことでした。自立課題以外にも、洗面など生活のあらゆる場面で常同行動があり先に進まないのだそうです。
周りの刺激や動きに注意散漫になって作業に集中できないお子さんなどは刺激を減らした環境を作ることは大切なのですが、この中学生の生徒さんのように刺激が好きな過ぎると常同行動が増える人もいます。常同行動の機能の1つは、刺激が少ない時に感覚入力を増やすことです。ひまなときに貧乏ゆすりやペン回しをする場合がこれに当たります。ですから刺激を減らした環境よりも、適度に刺激があった方が良いのでしょう。
シーンとした図書館よりも、周りの会話やBGMなど適度な刺激のあるカフェの方が集中できる人もいると思いますが、まさにこの中学生はこのタイプなのでしょう。

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