聞き分けの良い大人でいることはいいことか?

 あるご家庭のお父さんは、ご飯の間はニュースを見ることに決めています。その家には3歳の知的遅れのない自閉症のお子さんがいて、ご飯の時は撮り貯めておいた子ども番組のビデオを観たがりました。お父さんはご飯の間は絶対にニュース番組を見るというルーチンを変えたくないので、子どもはいつも泣きわめいていました。お母さんは、夫に「あなた、子どもが観たがっているんだから、少しは変えてあげたら」と言いますが、頑として聞き入れません。困った夫だなと内心思っています。また休みの日は、夫に子どもを預けて買い物に出かけるのですが、お母さんが「ただいまー」と言って帰ると子どもが抱きついて叩くのです。

 このエピソードを聞くと、多くの方はお母さんに同情したくなるでしょうし、少しは子どもに合わせたらと思うと思います。私は、どちらかに肩入れをするつもりはないのですが、子どもに合わせることに対してちょっと違う見方をしています。その理由として、第一に子どもが癇癪を起した際に、子どもの要求を叶えてしまうと癇癪を強化してしまうかもしれません。第二に、同じ状況でお父さんは子どもの要求を聞かない、お母さんは要求を受け入れるという対応をすることで、子どもの攻撃行動を間欠的に強化し、さらにそれがお母さんに向かうようになるということです(実際にそうなっています)。第三に長期的な影響として、子どもの癇癪を避けるあまり、なんでも子どもに合わせた生活を送っていくと親の生活が不自由になってくることです。第四に家庭で子どもに合わせてきた影響が、幼稚園・保育園、学校へと外の世界にも波及することです。

 子どもの癇癪を避けるために子どもの要求を呑むという対応は、世界中で繰り返し行われていることだろうと思います。でもある日、親や周りの大人がこの愚行に気が付いて状況が変わるのでしょう。

 ではどうしたらいいのか?まずこの愚行を避けるために、両親の間で意見の一致と協力関係を築く必要があります。どういう方針かは、それぞれの家庭の文化、子どもが外に出て困らないか?、大きくなって困らないか?という観点で考えます。どの方針が正しいかという答えはないと思います。

 たとえば、ご飯の時間はニュースを観て子どもは別の時間に撮り貯めた子ども番組を見るという方針を決めたら、それを貫き通すことです。最初から(子どもが赤ちゃんの頃から)夫婦で意見の一致や一貫性が保てていれば何も問題は起こらなかったと思います。でも、途中からでもそう決心したら変えないように頑張ります。ぐずりが生じても子どもの要求を叶えないとバーストという悪化した状態(大癇癪)が生じます。それを耐えれば2,3回くらいで治まります。

 大癇癪を緩和する方策はあります。突然の変化や見通しが持てないことに不安を持つ自閉症のお子さんには予告することです。まず子どもとの間で約束をし合意を得ます。2食のうち、1食は子ども1食はお父さんに合わせるというように譲歩してもいいかもしれません。次にその約束したことを見える化します。お父さんが「食事中はニュースーその後子ども番組」という流れを絵で表したりします。もし、それも子どもが耐えられないようでしたら、「短時間ニュースー子ども番組」からスタートして徐々にニュースの時間を長くします。

 あとお母さんが買い物から帰宅した後の攻撃行動の原因ですが、これは①普段の父母の対応の違い②母親がいつ帰宅するか見通しが立たない③母親が突然帰ってくることへの反応の3つが考えられます。①については前に話した通りですが、②と③については、母親がいつ頃帰るのか予定を伝え視覚化するのと帰る前に電話などをしてあと5分で着くとかを予告してから帰るようにするといいかもしれません。

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(同) ABC研究所は、自閉症スペクトラム障害 (ASD) に関する支援法について普及や啓発を行うことを使命にしています。自閉症支援は、応用行動分析 (ABA) とTEACCHプログラムに基づいた科学的方法論を基にしています。ABAは、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の支援についてアメリカ連邦公衆衛生局によって科学的に効果が確認されている方法論として推奨されています。TEACCHは米国ノースカロライナ大学と州政府が中心となって州全体で取り組んでいる自閉症児者の包括的な支援制度で、そこで開発された構造化や視覚的支援などの方法論は世界的な自閉症支援の標準となっています。ABC研究所は、その使命を果たすために、自閉症スペクトラムの支援法に関する研修・セミナー、施設・学校でのコンサルテーション、コミュニケーションや学習教材の研究開発、個別の療育や相談を行っています。

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