軽度知的障がい児の学校教育から成人期への移行支援の現状と課題

先日の7月9日(日)は九州女子大学で開催された日本福祉心理学会に参加してきました。西南学院大学の野口先生がぜひとおっしゃるので発表もさせていただきました。野口先生企画のシンポジウムもとても勉強になりました。趣旨は、軽度知的障がいの人で触法などで社会生活上の課題を抱えており、なおかつ親が保護者としての責任を果たせなくなっている場合にどのように社会で支え支援していけるのか、児童-青年期-成人期に移行する中でのつなぐ仕組みに問題はないのか、どのように補っていったらいいのかについてです。

話題提供者は、福岡市東区の基幹相談支援センターの池田顕吾氏、福岡市の措置児童を受け入れる若久緑園の中村隆氏、福岡市立博多高等学園の田中啓子氏でした。指定討論者は西南学院大学の安部計彦氏と野口先生でした。

池田氏は相談にあたった3人の事例を紹介し問題点を指摘されました。高等部は優等生だったが就職するとついていけずに離職してしまった事例、幼いころから児童養護施設に入所し十分に社会性を身に付けないまま異性との問題を起こしたり就労に結びつかない事例、同じく高等部では優等生だったが自己理解が乏しく勤務態度も良くないために離職を繰り返す事例でした。3ケースとも保護者が不在だったり適切な大人のモデルを示せていないという課題がありました。

中村氏からは2事例の紹介がありました。幼いころに処置入所したが自他の区別がつかず万引きなどを繰り返す触法の事例、児童期に虐待で入所し就労までむずびついたが無駄欠勤など勤務態度の問題やギャンブルでカード破産などをしてしまった事例の紹介がありました。若久緑園は児童施設なので成人の入所施設で生活を立て直しているとのことでした。

田中氏は2事例の紹介がありました。幼いころに実父母と別れて兄弟で叔父の援助の下で生活していましたがやや経済的に過保護であったために適切な人間関係を育てていくことができなかった事例です。卒後、就労に就きますがやはり人間関係で苦労し退職を希望しているとのことです。もう一人は家庭全体がネットやゲームに依存しており適切な家庭生活習慣が身につかないまま成長し、就労のイメージもつなかいので卒後も就労支援機関とかかわっているケースでした。

いずれも家庭の役割や機能が破綻していて支援がうまくいかない、むしろマイナスな影響を与えている、成長とともに支援の移行に課題のあるケースでした。またSNSの発達により間違った交友関係や悪影響を受けている部分も共通していました。家庭は普通に子育てを行い協力してくれるものという大前提がない場合にどのような仕組みがあって支援していけばよいのでしょうか。

安部先生はこの分野の法律に精通していらっしゃいます。まず前提は18歳未満の子どもの支援の基本は親との協働であるけれども、例外の子どもには要保護児童(児童福祉法第6条の2-8)という概念があって、被虐待児であったり非行に走ったりしていて子どもの権利と利益が守られていない状態のことを指します。また子どもと親の両方が通常の生活を送っていくことが困難な場合に要支援児童という概念があります。そしてそれぞれの市区町村の支援調整機関が「要保護児童対策協議会」というのを立ち上げて支援を行うことができます。上の2つに該当する児童であれば、本人や親の要請や参加がなくても支援チームを作ることができるのです。本人や親が支援を拒んでも、勝手に”おせっかい”を焼けるというわけです。

課題としては、①自己決定が未経験のままに社会に出されるのでは今回のケースのように無理があるので18歳以前に支援チームを作る必要があること、②市区町村のどの機関が窓口や調整役などをするのか、③子どもの参加をどうするか、④児童から成人の流れはこれでカバーできるが幼児期が入っていないなどがあげられました。

基幹支援センターの池田氏はいつも困難ケースのバトンを突然渡されるので移行支援協議会みたいなものを作れたらとおっしゃっていました。児童施設の中村氏も通常の若者も高校卒業後に専門学校や大学というモラトリアムを経て社会に出ていくのだから15歳くらいから3年かけて移行期間が設けられたらよいのではという意見と、福岡市の誘惑の多さは地域的な問題としてあるとおっしゃっていました。高等学園の田中氏は学校は在籍してる3年のスパンだけを見ていることが多いので移行も含めた機関連携の大切さを実感したと感想を述べておられました。

白熱したシンポジウムも時間がいっぱいになり質問も1つしか受けられない状態になりました。最後の質問は帝京大学ででスクールソーシャルワーカーをされている人でした。どこが調整役を担うかという問題で、実際には教育委員会や児童相談所などは虐待対応で手いっぱいだし、 市区町村の福祉課はノウハウがないので、やはり相談支援センターが率先してケース会議を開くのが良いのではという意見が出ました。

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