自閉症スペクトラム児への車内での行動問題に対する阻止の随伴性を応用した視覚的支援教材の効果

問題と目的:注意引きの機能を持つ行動問題への介入として、消去の手続きを取ると消去バーストによって、行動が一時的に悪化したり、悪化した行動をさらに強化したりする危険がある。本研究では、好子出現の阻止の随伴性を応用した視覚的支援教材(カウントダウントークンボード)を作成して母親に実践してもらった。さらにスクールバス内でも実践することでその効果を検証した。

対象児:知的障害を伴う自閉症スペクトラムと診断された特別支援学校小学部5年生無発語の男児。保護者には研究の同意を得ている。スクールバスのバス停や学校への送迎時に母親が運転する車中で強く窓を叩く行動を何度も繰り返しており、破壊に至る恐れがあったので、保護者に介入を要請された。

観察とアセスメント:定期的に家庭訪問を行っている第二著者が、6月25日に母親の運転する車に同乗し、学校から自宅までの対象児の行動を観察し記録を取ったところ29回窓叩きが見られた。対象児の窓叩き行動に随伴して母親が「止めなさい」など制止のための声かけをしており、注意引きの機能を持つことが推測された。

介入1:トークン数14個設定した視覚的支援教材(カウントダウントークンボード;写真1)を用意して、7月17日に第二著者が車に同乗して実践しながら母親に説明し、翌日から母親単独で実施してもらった。対象児が乗車し、車を発進させる前にボードに掲示してある視覚的指示を見せながら「窓叩きしなかったら○、窓叩きしたらトークンがなくなります。」と口頭で伝えた。

第二著者が介入に同行した初日は、消去バーストにより窓叩き行動が74回と急増した。その後、母親に実践してもらったところ徐々に叩く回数が減り、トークンの撤去数も減っていった(図1)。11月18日のフォローアップで第二著者が同行したところ撤去数は0であった。日頃も撤去数は1から2個で推移していると報告があり、窓叩きはほとんど目立たなくなっていた。

介入2:11月10日に母親がスクールバスの添乗員から対象児に窓叩きが見られることを聞き、添乗員に同じ教材を渡して使い方を説明し、11月12日から添乗員に実施してもらった。対象児がバス停で降車する際に添乗員に撤去したトークン数を聞き、それを母親に記録してもらった。

考察:介入初日は、窓叩きの回数が急激に増えたが、母親が一貫して視覚的支援教材を使って手続きを進めることで窓叩きは目立たなくなっていった。 •またスクールバスの添乗員にも同じ教材を使って効果をあげた。条件性の強化刺激としてトークンが確立することで、視覚的支援教材は好子出現の阻止による弱化の随伴性で、注意引きの機能を持つ行動問題の軽減を制御したと考えられる。また視覚的支援教材は、場面・対人般化に役立ち効果をもたらした。

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(同) ABC研究所は、自閉症スペクトラム障害 (ASD) に関する支援法について普及や啓発を行うことを使命にしています。自閉症支援は、応用行動分析 (ABA) とTEACCHプログラムに基づいた科学的方法論を基にしています。ABAは、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の支援についてアメリカ連邦公衆衛生局によって科学的に効果が確認されている方法論として推奨されています。TEACCHは米国ノースカロライナ大学と州政府が中心となって州全体で取り組んでいる自閉症児者の包括的な支援制度で、そこで開発された構造化や視覚的支援などの方法論は世界的な自閉症支援の標準となっています。ABC研究所は、その使命を果たすために、自閉症スペクトラムの支援法に関する研修・セミナー、施設・学校でのコンサルテーション、コミュニケーションや学習教材の研究開発、個別の療育や相談を行っています。

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