学習療法

発達障がいの支援に行動分析学的な支援アプローチが有効であるということが、ようやく日本でも浸透しつつあります。行動分析学自体は1つの学問体系として確立されていますが、実際の支援アプローチは療法家の数ほどたくさんの考え方、やり方があります。私が以前、属していた組織の支援アプローチ(ピラミッドアプローチ)も行動分析学に基づくものの1つです。ピラミッドアプローチでは、何を教えるか?という基準の1つに実用性を重んじるというものがあります。これは米国の教育哲学であるプラグマティズムの影響を受けているのではないかと思います。ピラミッドで言っている実用的な教育内容とは何かというと対象者の生活に役立つことを教えるということです。これは非常に理にかなっている考え方だと思います。たとえば、数の計算という抽象的かつ概念的な学習を反復するよりも、買い物を通じてお金のやり取りやお金の計算を学習する方が生活に直接結びついていますし、学習の動機づけも高いといえるでしょう。私は当初すっかりこの考え方に魅了されまして、約10年ほど前から療育活動でも実用性を重視したものに舵を切って取り組んでいましたし職員にもそれを徹底してもらうようにしました。子どもへの療育効果はとても高かったように思います。お恥ずかしいことに講演会でも機械的な反復学習は意味がないとまで言ってのけていました。受講者のアンケートの中には「それは言い過ぎです」というお叱りの言葉も見受けられました。

その数年後、私は考えを改めることになるわけですが、そのきっかけになったのが、この学習療法と呼ばれるものです。飛行機の中でビデオ放映されていた番組で福岡の高齢施設で認知症の予防に公文の学習教材を取り入れた活動が紹介されていました。この活動を取り入れることで明らかに認知機能の低下を予防できるというデータが示されていました。もちろん活動の中のどの要素が効果をもたらしているのかについてはさらなる研究が必要でしょう。たとえば、私の知り合いで高齢者の認知症予防の研究を行っている人がいますが、その人によると問題を解くこと自体よりも、その活動に関与する支援者とのコミュニケーションが重要な要素ではないかと感想を述べていらっしゃいました。それを実証するような研究計画を立てて実行すれば、明確になると思います。

今は実用性という考えを基盤に置きつつも、このような機械的反復学習にも、何らかの療育効果をもたらすものとして尊重しています。最近、訪れた障害者雇用を行っているところでも公文式の学習活動を取り入れていました。

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