強度行動障害に対するスタッフトレーニング(H27年発達障害学会シンポ)

これは平成27年に参加した発達障害学会で印象に残ったシンポジウムの紹介です。

自主シンポジウム1:強度行動障害に対するスタッフトレーニングをどのように進めるかー機能分析的アプローチの成果と普及を考えるー企画司会:井上雅彦 話題提供:五味洋一・大久保賢一・岡村章司・井上雅彦 井上先生(鳥取大学)は、自身の大学で行っている強度行動障害に対する施設職員を対象としたスタッフトレーニングの実践についての発表でした。「階層アプローチ」といって介入の階層を ①施設・学校全体の環境調整 ②個別の環境調整 ③機能分析的アプローチ の3段階に分けて介入を行っていました。対象者にアプローチする前に環境調整するのは効率的・効果的だと思いました。研修内容は、チームアプローチ、機能分析方略シートへの記入、コミュニケーション、余暇などです。一見、行動障害に直接関係ない事柄のようですが、行動問題を予防する上で重要な内容を網羅しています。効果測定は、受講者のABAの知識を調べるKBPAC、ストレスレベルを調べるGHQ30、実施の評価としては支援計画(方略シートの作成)を4項目で評価するチェックリストなどです。受講者が施設で実施しやすいように管理職宛に手紙を出すなどの工夫もされていました。これからの課題として ①研修を実施する講師の養成 ②受講者以外の施設スタッフの技能の向上 ③記録をつけるのが困難 などでした。③をバックアップするのに記録を簡便につけられるようにウェブシステムの完備も行っています。質問項目を完成させると、自動的にABC分析表が完成できるというものです。今は、鳥取内だけですが、もうじき一般のアプリで解放されるとのことです。 五味先生(筑波大学)は、昨年まで所属していた国立のぞみの園で行っていた強度行動障害支援者養成研修の成果の発表でした。 強度行動障害になりやすい障害要因としては、知的に重度から最重度で自閉症の度合いが強い人があげられていました。また強度行動障害の人は、養育者や施設職員からの虐待の対象になりやすいという報告もありました。一方で適切な支援を行うことで行動障害が低減し、安定した生活が送れることがわかっていることから、2013年から事業従事者を対象とした研修を始めることになりました。有効だった支援の上位は「構造化」や「代替コミュニケーション」で、私たちが取り組んできたことの重要さを改めて感じました。課題としては、研修を受けた職員が現場に戻った時の実践をどれだけ担保できるか、そのために現場でのコンサルテーションサービスが課題と言われていました。 岡村先生(兵庫教育大学)は、横浜で支援学校の教員時代の保護者トレーニングに関する実践でした。生のエピソードや苦労話が聞けてとても役立ちました。かなりの専門性を有する機能アセスメントに基づく介入法の計画と提案は教員が行ったそうです。週1回の定期的な母親との面談を通してそのための指示を出していきましたが、毎日の記録やフィードバックは「連絡帳」をうまく活用したそうです。介入の妥当性の問題として保護者からは、やることが多くて大変だった、父親との考えの相違などが上がりました。他にも保護者自身のアセスメントも重要だし、保護者自身が機能アセスメントできるようになるための指導(中野・牧野, 2004; 岡村・渡部, 2015)が課題としてあがっていました。 支援学校での教員経験もあって米国でのABA留学経験もあるPositive Behavior Support研究の第一人者でもある大久保先生(畿央大学)は、「スタッフトレーニングにABAの知識は必要か?」という発表でした。行動問題の解決においてABAの基礎知識の有無の効果を調べるために学生を被験者とした実験研究でした。6人の学生を3人ずつ2つのグループに分け、グループ1は事例検討-ABA講義-事例検討の順で、グループ2は、ABA講義-事例検討-事例検討の順で実施し、介入の効果を検討するためにそれぞれのフェイズの前後で計4回のテストを行った。テストはABAの知識を調べるKBPACと谷先生の開発したTK-ABA、検討した解決法が妥当なものかを調べるチェックリストから成った。結果、ABAの講義があった方が、妥当性のある問題解決ができたことだった。逆にABAの知識がないとあまり問題解決法に改善が見られなかった。特に結果操作に関する方略への影響が大きかったそうだ。これは過去の研究でも言われているように、コンサルテーションを行う前にABAの知識の習得は欠かせないということを裏付けるもので大変興味深い研究でした。

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