映画Jobsとイノベーション

昨日は、今年度で九工大を退任される学長の松永氏のイノベーションの話を聞きに行きました。学長までやられる人の話ですから、国家的な規模から北九州ローカルなものまで話題は多岐にわたっていました。私はテクノロジーや産業の話を聞くのが好きでいわば趣味のようになっています。

まずイノベーションとは「新しい価値を創り出すこと」で、バルーンカテーテルを発明したFogarty博士の話を引用されていました。博士は「医療イノベーションは患者のために新しい価値をつくることで、様々な規制や古い理念という障壁を越えなければ、イノベーションは興せない」と言ったそうです。イノベーションを興すためには、「ユーザーにとっての新しい価値」を創りだすことと、障壁を超える覚悟が必要だということです。

昔のSONYは、トップが5つのスペシャルプロジェクトを掌握していて、潰れてしまうものもあったが、その中からウォークマンのような大ヒット商品を次々に生み出していったと言います。つまり、たくさんの失敗を許容する風土がないとイノベーションは生まれにくいんじゃないでしょうか。今は、何となく世知辛い世の中になって、失敗する余裕がないですものね。それと日本には長いものに巻かれるという言葉があるように、上からダメと言われたり、周りの目を気にし過ぎて、壁を超えるのを簡単にあきらめてしまうのではないでしょうか。

もう1つのキーワードは「オープンイノベーション(Henry Chesbrough)」。1つの会社だけでの研究開発は非効率であり、これからは企業内外、研究者間で自由にアイディアや交流をもたらし最も利益をもたらす方法の開拓が不可欠だともおっしゃっていました。都市の比較で京都と北九州の例が出されていました。京都は歴史と伝統の都と思っていましたが、意外にも京セラや任天堂などイノベーティブな企業がたくさん集まっていて、都市の規模はそれほど変わらないのにやはり京都が圧倒しているのです。

それは、北九州は重工業を頂点とする垂直型の産業構造になっているのに対して、ほとんどが中小企業から始まった京都では、水平型の産業構造で横の連携でイノベーションが生まれやすい土壌があるとのことでした。シリコンバレーも同じような構造を持っているそうです。

先月行ったマレーシアの行き帰りは、マレーシア航空を利用したのですが、映画を観るのも好きで、1つはスティーブ・ジョブスの生涯を描いた映画を観ました。その中で印象的だった場面の1つは、大学のホールのような場所で若い工学者が自分の開発した完成途上の電子製品をたくさんの聴衆に向かって発表している場面でした。そうやって切磋琢磨しながら、そのアイディアに興味を持った中小企業が出資して新たな製品として売り出すという仕組みができていたのです。そのようなやり取りが自由にできる環境ができれば、行政にお金を出してもらわなくても、オープンでイノベーティブな環境ができるのではないかと思いました。

それと最後にイノベーションを興す天才の出現です。映画で描かれていたJobsは、まさしくカリスマであり天才と呼べる人物です。学長は、そのような天才をはぐくむための高等教育の充実、世界のトップ10に入るように大学改革をしなければならないと訴えてらしたが、私はその前にそういう人たちを潰さないで受け入れ、育てる社会環境が必要だと思います。映画を観ていて思うのは、Jobsみたいな人は才能があっても残念ながら日本では潰されてしまうだろうなということです。ここは私たちの大きな出番があるところかなとも思います。

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