鳥栖での行動問題の講演会からの雑感

2月13日(土)は、鳥栖で発達障害者支援センター結主催で行動問題の理解と対応というテーマで講演会を行いました。サンメッセ鳥栖というサガントスのサッカースタジアムのすぐそばの会場でした。応用行動分析(ABA)の知見を応用した支援のニーズは日増しに高まっているようで、会場も200人以上の方々が集まりました。行動分析学を基にしたABCモデルでは、行動問題の分析や対応を考える前に、自閉症スペクトラム(ASD)の人にとって優しい基本的な環境整備の大切さや関わり方の基本についてお伝えします。というのも、ASDの人が行動問題を生じさせてしまう主な要因は、彼らにとって適切な環境が提供されていないことがほとんどだからです。

そのような基本事項を押さえた上で、行動問題の要因を探るABC分析の演習や、フォームを使った解決策の計画を提案します。また、たとえ行動問題の要因やその行動の意図や目的が明確になったとしても、それを受け止める側の姿勢や考え方によって、対応法の選択は大きく影響を受けることになります。

この日フロアーから紹介していただいた成人の作業施設の1つの事例は、農作業の時間に他のことをしてしまう利用者の人がいるけれどもどうしたら良いか?というものでした。この職員の方の言外の意味には、「作業中にさぼってもらっては困るよ」という、通常の職場の管理職の方が従業員に抱く感情が含まれていると思います。

その利用者の方は、職員とは自発的で機能的なコミュニケーションはほとんどないということでした。ですから、その時の状況の中でその方が具体的に取っている行動の前後関係から、彼の気持ちや意図といものを推測するしかありません。それがABC分析です。ABCのAは行動のきっかけになること、Bはその時に取った具体的な行動、Cは行動によって本人に生じた環境の変化を表します。職員の方の分析によると

A:屋外のでの農作業     B:農作業を中断して         C:ピーマンを眺められる

  ピーマンがなる季節     ピーマンを見に行く

このABC分析から、ご本人の行動は”ピーマンを見る”という好子に導く行動だと読み取れます。また他にも

A:屋外での農作業      B:温かいビニールハウスに移動する C:寒さを避けられる

  いつもより寒い天気

このABC分析からは、ご本人の行動は”寒さ”という嫌子を避ける行動だとわかります。これらのことは、職員の方には自明のことのようでした。「とにかく仕事をさぼらないで働いてほしい」という職員側の求めに応じてもらいたいということのようです。どうしたらよいでしょう?

支援の考え方や理念といった価値観の変容が必要になると思います。1つは、できるだけ利用者の要望に応じるという利用者第一の考え方です。しかし、全ての要望に応じていたら、家族の方や職員の方は、大変な思いをすることになるかもしれません。そこで、2つ目は、利用者にも社会からの要請にある程度応じてもらうという、お互いにWin Winの関係を作るということでしょう。

ABCモデルから提案できる具体的な解決策は、

・利用者の方は勝手にピーマンを見に行くのではなく、職員に許可を得て見に行く

・寒さや困ったことなどを職員に伝えて、それを解決してもらうようにする

・そのために機能的な代替コミュニケーションの使用を保障すること

・視覚的スケジュールの提示により、作業時間と休み時間の違いをわかりやすくしてあげること

・そのためにどのような合図や種類のスケジュールがわかりやすいか評価する

などです。

すでに利用者方に視覚的なスケジュールや代替コミュニケーションの手段を提供している、学校、施設、ご家庭であれば、このような問題は生じないでしょう。この施設では、2つともまだ取り組んでいないということでした。

私たちは、ASDの子どもや利用者の必要な支援の考え方や手段を提供するために環境側(施設、学校、家庭、社会全体)を変える努力を怠ってはいけないと思います。そして3つ目の重要な価値観が導かれると思います。この施設の例でいうと、職員全体がこのような支援の価値観を持つための合意形成の場と機会が必要だということです。

このように行動問題を広い視野で眺めていくと、行動問題は決して本人が単独で起こしているのではなく、支援する側の受け止め方や理解の仕方、社会の側が本人に適切な支援環境を提供していないことが主な要因であるとわかります。

これを単なる理念だけで終わらせてはいけません。具体的かつ実効性のあるものにしてなければなりません。障害者差別禁止法という法律がその1つですが、その中で私たちは障害を持った方に対して合理的な配慮を行わなければなりません。つまり、適切な支援環境を提供することが、具体的に明記されたのです。

4月に行われる自閉症デイは、社会全体にASDの人のことを理解してもらう絶好の機会ですし、非常に重要な活動だということがわかります。そして、一過性ではないより有意義で継続性のある運動にする必要があると思います。

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(同) ABC研究所は、自閉症スペクトラム障害 (ASD) に関する支援法について普及や啓発を行うことを使命にしています。自閉症支援は、応用行動分析 (ABA) とTEACCHプログラムに基づいた科学的方法論を基にしています。ABAは、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の支援についてアメリカ連邦公衆衛生局によって科学的に効果が確認されている方法論として推奨されています。TEACCHは米国ノースカロライナ大学と州政府が中心となって州全体で取り組んでいる自閉症児者の包括的な支援制度で、そこで開発された構造化や視覚的支援などの方法論は世界的な自閉症支援の標準となっています。ABC研究所は、その使命を果たすために、自閉症スペクトラムの支援法に関する研修・セミナー、施設・学校でのコンサルテーション、コミュニケーションや学習教材の研究開発、個別の療育や相談を行っています。

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