自閉スペクトラム症(ASD)の人とそうでない人のコミュニケーションスタイルの違い

ここではコミュニケーションを表出、つまり意志表出に絞って論じたいと思います。

ASDの人とそうでない人の意志表出の違いは何でしょう。これは単に発語があるかどうか、絵カードなどの代替コミュニケーションを使うかどうかといった意志表出の手段に留まりません。


私たちは、普段、何気に意志表出をしてるのか、どのようにしているかについては、あまり考えていないでしょう。でもASDの人と関りがあるASDでない人は、その違いがはっきりしています。まず、ASDで名人が、相手の人に自発的に意志表出する場合は、まず相手の注意を引きます。「〇〇さん」と名前を読んだり、「ねえ」などと言ったり、大声を出したりして注意を引いてから意思を伝えます。また意志表出をしている間も相手の目を見たり顔の方を向いて注意を持続したりします。これを非言語コミュニケーションなどと言いますが、注意を引くというコミュニケーションです。


ASDの特性が強い人は、相手の注意を引くという行為が乏しいように(ASDでない人には)みえます。相手の目を見ない、相手の方に向かない、近くまでいかない、壁に向かってしゃべる、ひとり言なのか(ASDでない人には)意志表出なのかわからないこともあります。


無発語の人には、絵カードなどの代替コミュニケーション手段を支援することが大切で、適切に支援すればすぐに絵カードを使ったコミュニケーション方法を習得します。しかし、絵カードで意思表出できるようになっても、上記のようなコミュニケーションスタイルは残ったままが多いのです。絵カードを使ったコミュニケーションも、PECSのように相手に渡すスタイルと、VOCAのように絵カードを指す・ボタンを押すスタイルもあります。いずれも、相手を見ないで絵カードを渡す、ボタンを押すことはざらです。


そうすると、ASDでない人のコミュニケーションスタイルに合わせるためにアイコンタクトを教えるのがいいのか?アイコンタクトも、シェイピングを使って行動形成することは可能です。アイコンタクトだけでなく、相手と対象物を見合う共同注視などもシェイピングで行動形成可能です。これらの前言語コミュニケーションは、いろんな早期療育のプログラムに組み込まれていますし、言語発達に効果があると言われています。


私は、これには少し懐疑的です。ASDでない乳幼児の初期の発達の過程で、アイコンタクトや共同注意などがあって、言葉が出始め表出コミュニケーションが深化していく、発達的な順序があるのは確かです。でも、それはそういう発達の順番を示しているだけで、アイコンタクトや共同注意が、言語発達の原因であるとまでは言い切れないと思います。

特集記事