特別支援学校高等部での自傷行動の生徒の対応
先日、ある特別支援学校の高等部に出向き、自傷行動を示す生徒の担任の相談を受けました。朝の会をしている最中で他の生徒が着席している中、その男子生徒は、教室の片隅のマットのコーナーに座り扇風機にあたりながら、ガチョウのスクイーズ人形を持って過ごしていました。どうやら暑さに弱いみたいで、クーラーが設定されているものの扇風機は必須のようです。
担任が報告する主訴は、生徒の思いが伝わらないときに泣きながら怒って、自分の太ももやふくらはぎ、頭を叩く自傷行為を行うそうです。それを止めようとする教員に対して、叩いたり、物を壊したりするので、落ち着くのに15分から30分かかるとのことでした。この日も、登校時にいつもはいないはずの保護者の姿が見えたことをきっかけに落ち着かなくなったということでした。担任は、ほぼマンツーマンで対応しており、生徒が不穏になったら、それを治めるように右往左往しているようでした。意思表示の手段は、ボードにいくつか絵カードが貼ってありますが、自発的に使用することはなく、教員がどうなの?と聞きながら、ボードを提示すると、それを指すことで意思を伝えているとのことでした。
本児にどのように見通しを伝えていますか?と担任に聞くと、教室には、文字で書いた時間割はありますが、本児にわかるような活動スケジュールは用意されておらず、移動の度に担任が声かけで移動を促していました。声かけの指示は、拒否されることもあり、音楽室など移動距離が長いと途中で座り込むこともあるそうです。まだ着替えが終わっていなかったので、担任が体操着を見せて促すと、スーっと着替えのコーナーに移動しました。
そこで、担任にお伝えしたのは、
・本人には、何をするのか見通しが伝わっていないので、切り替えが難しいことと、いつもと違うことがあると不穏になること
・また担任からその都度、声かけで切り替えを促しているが、本児は何をするのかわかっていないので拒否や出ること
・自傷が起こって治める対応をするよりも、予め見通しを伝えることやハプニングを起させない予防的対応が重要なこと
・意思表出は、受動的なので、自発的コミュニケーションに取り組むこと
・意思表出のカードを自発的に使えるようになるには、必要な場面で教えること
・要求カードの意味理解は、受け手による具体的な対応が重要
・「暑いです」という1枚のカードで、マット状での休憩、扇風機、うちわ、冷たいお茶という複数の対応では混乱するので、
それぞれ分化したカードで別々に教える必要があること
・一人で抱え込まず、学年や学部の他の教員と協力して取り組むこと
などでした。
また次回訪問予定になっていますので、その時にどうなっているか楽しみです。
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