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さるく事件と強度行動障害

さるくの代表者が、利用者への暴行容疑で逮捕され、報道をされて1カ月が経とうとしております。さるくではABAを基にした支援を行っているということで、ABAへの風評被害が広がることを懸念し、日本行動分析学会の緊急シンポジウムが開かれました。さるくの支援については、学会の専門家にお任せするとして、私なりの見解を述べたいと思います。


まずこの問題の核心として私が思うのは、強度行動障害で困っている家族に対して、特定の技法を持った特定の個人に頼らざるを得ない状況です。これは、地域社会の問題として対処を考えないといけないと思います。


また、強度行動障害といった激しい行動問題に対応する上で、(ABAかどうかは別にして)ある種の嫌悪的な技法を使わざるを得ない状況は必ずあります。それらの嫌悪的な技法は、行動制限や身体拘束、薬物療法などです。


それらの技法を民間の1組織が担うには無理があります。法的・倫理的基準が守られ、高度なトレーニングを受けた人材がそろった環境である必要があります。それは医療機関や公的機関ということになるのではないでしょうか。


しかし、現状では支援がなぜ機能していないのか?まず考えらえることは、

① 強度行動障害で緊急性のある人を受け入れ対処する施設や体制

② そういう人や受け入れる施設を見つけ介入できる仕組み

が整っていないことだと思います。


このような支援の体制を整備するのは、1個人や民間の施設ではなく行政の責任です。今すぐ、各自治体で取り組むべきなのは、障害者自立支援地域協議会、発達障害者支援協議会を立ち上げて、そのような体制を作るようにアクションを起こすべきです。または国(厚生労働省)から各自治体に要請すべきではないでしょうか。福岡市や横浜市などの先進的な取り組みをしている自治体はすでにあります。


応用行動分析のPBSや公衆衛生の分野では、3層支援モデルというものを提唱しています。

第3層:緊急対応が必要な強度行動障害の人

第2層:強度行動障害を示している人

第1層:強度行動障害のリスクのある人


上記の①②のような体制が必要なのは、第3層です。

第1層や第2層の支援者(教育や福祉)には、予防的な対応ができるようなABAのトレーニングが必要です。


北九州市では、福岡市での先進的な取り組みを参考にしながら、市で支援する体制を整えるために発達障害者支援地域協議会の中で去年から検討を進めています。その分科会である強度行動障害の部会では、7つの提言を基に議論を進めました。


提言1 実態調査の実施

市内の強度行動障害のある人とその家族を対象とし た「実態調査」を行い、必要な情報を集約したうえ、 当事者と家族、支援者の抱える困難を地域社会に向 け明らかにすること。


提言2 地域協議会の設置

当事者家族、福祉、教育、医療などの支援者と行政 などからなる協議会を設け、開かれた議論のもとで 強度行動障害に係る地域支援体制の全体構想を策定 すること。


提言3 アウトリーチ支援チームの設置

科学的根拠に基づく支援を正しく行うことのできる、専門性の高 い支援者からなる「アウトリーチ支援チーム」を編成し、家庭、学 校、福祉、医療の現場に即時介入して行動問題の改善を図ること。 なお、「アウトリーチ支援チーム」の編成・設置にあたっては、 北九州市が設置・委託・指定している現行の「総合療育センター」 「発達障害者支援センター」「障害者基幹相談支援センター」「特 別支援教育相談センター」の機能統合や再編などを行うとともに、 外部の専門家を迎えて必要な財源と人材確保、身分保障を行い、即 時介入、早期改善、指導育成のため必要な権限を付与すること。


提言4 拠点施設の整備

強度行動障害のある人とその家族及び支援者の生活と安全 を守り、行動問題への集中支援を行いその低減を図るため、 強度行動障害のある人を一定期間、受け入れる施設を整備す ること。 なお、この受入施設には、提言3の「アウトリーチ支援 チーム」と、以下「提言6」に述べる教育支援機能を付置し、 教育、福祉、医療などの専門職と必要な行政権限を有する、 本市における強度行動障害支援の拠点として整備すること。


提言5 生活の場の確保

強度行動障害のある人が、行動障害の低減した後も、家族 から自立して将来にわたり必要な支援を受けながら地域で生 活を営むことができるよう、強度行動障害のある人(行動問 題が改善した人を含む)の生活の場を確保すること。 なお、生活の場とは、入所施設、グループホーム、支援付 き単身生活などを指し、行動障害の状態にあわせて一人ひと りの望む暮らし方が自由に選択できるよう、必要な体制を整 えること。


提言6 教育と普及啓発の推進

教育、福祉、医療などの支援者と家族が、科学的根拠に 基づく統一した手法を用いて、幼少期から自閉症支援に 取り組み、行動問題の予防や重症化予防に取り組むこと ができるよう、「提言4」の拠点施設を中核として、多 職種と保護者のための体系的かつ実践重視の教育や自閉 症支援の普及啓発に取り組むこと。


提言7 必要な人材確保と インセンティブ制度の導入

強度行動障害のある人を受け入れる教育、福祉、医療な どの施設を対象に、必要な職員の加配を行うこと。また、 行動障害に関する専門性を有し、直接支援に携わる支援 者に対し、特別勤務手当または専門職特別加算などの形 で、その職務に応じた報酬を支援者に直接支給する制度 を創設すること。


この提言は、北九州市役所の保健福祉部長に提出され、今年も施策実現に向けて協議が続けられます。また、これに先立つ、令和2年9月15日(火)には、北九州市議会の本会議 一般質問 強度行動障害の対応について、公明党 中島 隆治 議 員の質問に対する保健福祉局長が正式に回答を寄せています。


「・・・強度行動障害のある人の暮らしの場を広げるには、施設整備に止まら ず、問題行動の原因を見極めてその軽減に取り組む仕組み、強度行動障害の ある人を個別に支える場の確保、専門的な支援を行うために必要な人員の確 保など、ハード・ソフト両面から、対応の強化を図る必要があります。 こうした考えのもと、市では強度行動障害者支援の充実について、他の大 都市と共に国への要望を行ってまいりました。今後は更に、昨年9月に立ち 上げた「発達障害者支援地域協議会」に専門部会を設置し、強度行動障害の ある人の「暮らしの場」や、その人らしい「暮らし方」を支える体制につい て、関係者の意見も聞きながら丁寧に検討を進めてまいります。」


これまでの協議会の進行内容については、北九州市役所のホームページを参照してください。

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/kurashi/menu01_00318.html


「チャレンジング行動ー強度行動障害を深く理解するために」二弊社の本は、園山繁樹先生と野口幸弘先生が監修している強度行動障害について、応用行動分析的な対応法だけでなく、医療や様々な支援システムの構築についても言及している本です。私も訳者のひとりです。

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