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【研修レポート】名古屋セミナー報告― 行動は“教えればできる”。環境が整えば“自然にできる”。

  • 2月23日
  • 読了時間: 6分

2月22日(日)、大河ドラマ「豊臣兄弟」で盛り上がっている名古屋で ABAに基づく行動の指導(レベルB) をテーマにしたセミナーを開催しました。 午前中は、困難事例を抱える放課後等デイサービスと発達障害児を診ている小児病棟の事例を取り上げながら、単一型行動と複合型行動の指導方法を深く掘り下げました。今回の研修は、単なる「行動の見方」ではなく、 “行動をどう教えるか”を具体的に学ぶ実践編。 参加者の皆さんの表情が、講義が進むにつれて「なるほど」「そういうことか」と変わっていくのが印象的でした。


■ 単一型行動とは?

ひとつの合図(弁別刺激)に対して、ひとつの行動をするスキルのことです。 

  • 「右手あげて」と言われて右手をあげる

  • 赤信号を見て、交差点で止まる

  • 自分の帽子を取ってくる

  • 棚の名前を見てカバンを置く

合図 → 行動 → 結果 がシンプルで、 “できる・できない”が明確に分かるのが特徴です。


■ 複合型行動とは?

複数の行動が順番に組み合わさってできるスキルのことです。 

  • 着替える

  • 荷物の準備をする

  • レクの説明中に座り続ける

  • 服を片付ける

  • 料理の手順をこなす

複合型行動は、 1つの行動ではなく“行動の連鎖”でできています。まず課題分析によって、行動を細かく分けてアセスメントすることが大切です。


■ 行動問題の多くは、“できない”ではなく「適切な行動が身についていない」から起きている

今回扱った事例の多くは、表面上は「問題行動」に見えるものでした。

・卓球で順番を守れない 

・送迎車で靴を脱いでしまう 

・レクの説明中に着席できない 

・服を片付けられない

ABAでは、問題が起こる原因を次の3つに分類します。

レベルA:環境が合っていない。することがわからない 

レベルB:行動が身についていない 

レベルC:動機づけの問題

今回の事例は、ほとんどが レベルB=行動を教えれば改善する問題 でした。“行動が身についていない(レベルB)” ことが原因であるケースが非常に多いのです。


■ 小児病棟の医師の言葉が象徴的だった

「環境設定の不備による行動問題が、罰的対応に終わっていた」

セミナー中、小児病棟の医師がこんな感想を漏らしていました。

「環境設定の不備による行動問題の発生と、それに対する罰的対応に終わっていることについて考えさせられた」

これは、医療・教育・福祉の現場で非常によく起きることです。

・順番がわからないのに「守りなさい」と叱る

・靴を脱ぐ理由を知らないまま「脱がないで」と注意する

・レクの説明が長すぎるのに「座りなさい」と怒る

・片付けの手順が複雑なのに「片付けなさい」と促す

できない理由を取り除かずに、行動だけを止めようとする。 その結果、罰的対応が増え、子どもも大人も疲弊していきます。

ABAの視点に立てば、 行動は“環境が整えば自然にできる” ということが明確になります。


■ 単一型行動の事例:卓球で順番を守る

― ルールを理解していないのに「守れ」と言っても無理

小児病棟の事例では、卓球の順番を守れず、喧嘩になるという相談がありました。

標的行動:卓球で相手の番で交代する 

誤反応:自分のゲームを続ける、文句を言う、喧嘩

このケースでは、 「順番のルールが曖昧」「交代の合図が不明確」 という環境上の問題がありました。

そこで、一緒に考えながら次のような支援を提案しました。

・順番ボードを作る

・1ゲーム終わったら交代というルールを明確化

・守れたらトークンで強化

・守れなかったら次の順番が下がるという自然な結果を設定

つまり、 “順番を守る”という単一型行動を教えるための環境を整える ということです。


■ 単一型行動の事例:送迎車で靴を履いたまま乗る

― ASDの子どもにとって「靴を脱ぐ」は自然な行動のこともある

放デイの事例では、送迎車に乗ると靴を脱いでしまうという相談がありました。

行動を起こす合図:シートベルトを閉めた後

正反応:靴を履いている

誤反応:靴を脱ぐ、途中で脱ぐ

ASDの子どもにとって、

・靴の締め付けが苦手 

・車内は“家”の延長に感じる 

・靴を脱ぐことが習慣化している 

など、理由はさまざまです。

そこで、次のような支援を提案しました。

・乗車前にイラストでルールを説明 

・シートベルトを閉めるタイミングで再度確認 

・脱ごうとしたら身体プロンプトで阻止 

・履いていたらすぐにほめる

つまり、 「靴を履いたまま乗る」という単一型行動を、プロンプトと強化で教える というアプローチです。


■ 複合型行動の事例:レクの説明中に着席する

― “座る”のではなく、“座り続ける”という複合行動

複合型行動の事例では、レクの説明中に着席できないという相談がありました。

課題分析を見ると、 着席は「1つの行動」ではなく、 複数の行動の連鎖 であることがわかります。

  1. 活動開始の合図で着席

  2. あいさつをする

  3. レクの説明を聞く

  4. ルール説明を聞く

  5. 注意事項を聞く

  6. 今日の目的の聞く

  7. 名前を呼ぶまで着席

このように、 “座り続ける”は複合型行動であり、教えなければできない ということが明確になります。

支援としては、

・ホワイトボードに手順を可視化 

・着席の写真を提示 

・離席しそうになったら身体プロンプトで阻止 

・座っていたらすぐにほめる

という、エラーレス支援を提案しました。


■ 複合型行動の事例:服を片付ける― 片付けは「7つの行動の連鎖」

中学生の事例では、病室で服を片付けられないという相談がありました。

課題分析では、 片付けは次の7ステップに分解されていました。

  1. 洗濯物を受け取る

  2. 種類ごとにベッド上に並べる

  3. 袋をはがす

  4. 袋を重ねる

  5. 服をたたむ

  6. タンスに入れる

  7. 袋を所定の場所に置く

達成率は 17%。 つまり、 できないのではなく、できるように教えられていない ということです。

支援としては、

・袋の置き場を決める 

・タンスのラベルをつける 

・初日は職員が1〜6をモデル提示 

・最後の7だけ本人にやってもらう(逆行連鎖)

という方法を提案しました。


■ 参加者の学びが深かった理由

― “行動を教える”とは、こういうことだったのか

今回のセミナーで参加者が最も驚いていたのは、 「行動は、細かく分けて、順番に、エラーレスで教える」 というABAの基本でした。

・プロンプトの種類 

・プロンプトの外し方 

・弁別刺激の設定 

・強化のタイミング 

・課題分析の方法 

・逆行連鎖・順行連鎖 

・自然な強化子の活用

これらを事例とともに学ぶことで、 「行動を教える」ということの意味が、 参加者の中で立体的に理解されていきました。


■ 最後に:行動は“問題”ではなく“スキル”である

今回の名古屋セミナーを通して、改めて感じたことがあります。

行動は問題ではなく、スキルである。 スキルは、教えれば身につく。 環境が整えば、自然にできる。

罰的対応では、行動は変わりません。 しかし、 

・環境を整え 

・行動を分解し 

・プロンプトで支え 

・強化で伸ばし 

・自立へフェイディングする

このプロセスを丁寧に行えば、 子どもたちは確実に成長します。

名古屋の参加者の皆さんの真剣な表情と、 「明日からやってみます」という前向きな声が、 とても印象に残る一日でした。また次の地域でも、 現場の支援者と一緒に学びを深めていきたいと思います。


 
 
 

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