
公園でもしますか?
先日、ある児童発達支援施設でのコンサルテーションに行ってきました。そこでは遊戯室での自由遊びが話題になっていてビデオを流しながら職員とディスカッションを行いました。その中ですべり台を逆に登っていく子どもの行動が話題になりました。まだ生活年齢も発達年齢も幼い子どもにどう対応するか話し合いました。そもそも逆でもいいのでは?という意見もありましたが、それだと他児とぶつかったり、本人が怪我をしたりトラブルが生じるだろうということで階段から登って上から滑り降りる方が好ましいという意見に落ち着きました。 さてすべり台を逆走するという問題にどう対処するのか?このように行動レパートリーが未熟なクライエントにはABCモデルでは行動の法則から3つのレベルで対処法を考えます。レベルAは、どうしたらいいのか本人はやることがわかっていますか?という問いで考えます。おそらく本人はわかっていなでしょう。正しいすべり台の使い方を写真で示すという意見が出ました。 レベルBは行動が身についていますか?という問いで考えます。おそらくこれもNoだと思います。ビデオで支援者はそのまま逆走

介助者の性差によるものか、介助の仕方によるものなのか?
先日、成人のデイサービスと入所でのショートステイの両方を利用している若い男性利用者であるAさんの食事介助のことでケース会議がありました。その人は最重度の知的障がいがあり自閉症もあるのですが、行動はゆっくりで身体的な介助も必要な方です。その中で食事の介助のことが話題になりました。 Aさんは気分の変動もあって食事を食べたり食べるのが進まなかったりします。まず一緒にビデオを観てみました。介助者の女性職員は、本人のペースに合わせて食材をお皿に載せたり、フォークを刺しやすいように配慮されながら支援していました。上手に介助されているなというのが印象としてありました。ある男性B職員が「自分の時は、よく食べないのですが、介助者の男女差があるのかな」と感想を述べました。他の女性C職員が「私は好きなものを先にあげたら、あまり好きでないものでも食べられるから、先に好きなものを食べるタイプの人かなと思います。介助者の性差よりも、介助の仕方じゃないですか」と言いました。C職員が他の女性D職員に話をふると「私の場合はこの人はプリンが好きだから、プリンと交互に食べると完食しま

自発的代替コミュニケーションを教える最初の一歩
絵カードを使った意思表示の代替法を子どもに指導する最初に大事なことは”タイミングを逃さない”ということです。支援者の多くは、なぜだか”絵カード”の方を大事なもののように感じてしまうのか、初期の段階で絵カードに注目させ「これを渡してね」みたいな説明をしてしまうのです。自発的コミュニケーションを教える際に重要なのは絵カードではなく本人の”自発”です。より具体的には本人の”自発的な行動”です。本人の何らかの”自発的な行動”を絵カードを使った”自発的コミュニケーション”へと変化させていくのです。絵カードはあくまでも手段に過ぎず脇役なんです。 たとえば、写真のお子さんは目の前のシャボン玉に対して明らかに興味を持っていることがわかります。それはシャボン玉に直接手を伸ばしているからです。これがこのお子さんの自発的な行動です。そして自発というのは本人が最初に何かを始めるということですから、支援者を含めた周りの大人がとやかく言うのはもっての外です。子どもが自発するまでは支援者はじっと我慢して待たないとけません。 でもここで、大人しくじっとしていて自発のそぶりを見せ

軽度知的障がい児の学校教育から成人期への移行支援の現状と課題
先日の7月9日(日)は九州女子大学で開催された日本福祉心理学会に参加してきました。西南学院大学の野口先生がぜひとおっしゃるので発表もさせていただきました。野口先生企画のシンポジウムもとても勉強になりました。趣旨は、軽度知的障がいの人で触法などで社会生活上の課題を抱えており、なおかつ親が保護者としての責任を果たせなくなっている場合にどのように社会で支え支援していけるのか、児童-青年期-成人期に移行する中でのつなぐ仕組みに問題はないのか、どのように補っていったらいいのかについてです。 話題提供者は、福岡市東区の基幹相談支援センターの池田顕吾氏、福岡市の措置児童を受け入れる若久緑園の中村隆氏、福岡市立博多高等学園の田中啓子氏でした。指定討論者は西南学院大学の安部計彦氏と野口先生でした。 池田氏は相談にあたった3人の事例を紹介し問題点を指摘されました。高等部は優等生だったが就職するとついていけずに離職してしまった事例、幼いころから児童養護施設に入所し十分に社会性を身に付けないまま異性との問題を起こしたり就労に結びつかない事例、同じく高等部では優等生だった