環境の構造化は人ごとに成長に合わせて変化する

先日、自閉症支援に熱心な職員さんと話す機会がありました。彼女は元の職場を離れ自閉症の方への構造化による指導を取り入れている幼児と学童の事業所に最近入ったばかりなのですが、どうも活動場所ごとの境界が全て段ボールや衝立で設定されていて迷路のようなたこ部屋になっているそうです。年長のお兄さんやお姉さんの部屋もそうなっているそうです。 物理的構造化というアイディアは、自閉症の人にとって場所と空間をわかりやすく設定するための工夫のことを指しますが、具体的な工夫としては、第1に活動毎に場所を設定し1:1対応にしたらわかりやすいというものです。たとえば家の中でいうと食事(活動)をする食卓(場所)、歯磨き(活動)をする洗面所(場所)が分かれて1:1対応になっていると思います。そうするとその場所に行けば自然に活動が自発されるようになります。 逆に場所が多目的に使われれば、行動統制が難しくなり混乱を招くことになります。たとえば、幼いお子さんのいる家庭だと親の都合でリビングという1つの場所で着替え、食事、歯磨き、テレビ視聴、勉強など様々な活動をさせてしまうかもしれません。ふつうの大人は1つの場所で複数の活動を同時に行うことに慣れています。特に女性は男性に比べてその能力にたけていることが脳科学の分野でも証明されています。たとえば、料理をしながら電話に応じるなど朝飯前だと思います。 しかし自閉症の人は、ふつうの成人女性の正反対で極端な特性を持ってます。それはシングルフォーカスと呼ばれる特性で、一度に1つの物事にしか注意が向かないし、ある物事から別の物事への切り替えに時間がかかります。だから活動と場所を1

くしゃみを極端に嫌がる中学生

D君は特別支援学校中学部の3年生でもうすぐ卒業します。ある事情から高等部には進学せず成人の事業所に入ります。家には両親と4つ上の大学1年生のお姉さんがいますが、前から特にお姉さんに対して変な対抗意識があるのか、お互いに相性が良くありません。お姉さんも高校までは部活や塾で夜遅く接点も少なかったのですが、大学に入学してから、夜家にいる時間が長くなり接点が多くなったのでぶつかることも多くなりました。Dくんは人のくしゃみや咳払いが大嫌いで、両親でも叩くような仕草をして嫌がります。お姉さんに対しては、髪を引っ張ったりして泣きながらひどい攻撃行動をするので親もほとほと困っています。そこで行きつけの病院のドクターに聞くと精神薬の量を少し増やしてくれました。そして写真のような本人に家族がくしゃみをすることやそれについて感じていること対処方法などを説明したイラスト文を両親は用意しました。 今年1月初旬からこの取り組みを始めるとお姉さんへの攻撃行動は半分以下に減ったそうです。攻撃しようとすることはあるので親も止めようとすることもあるのですが、以前は逆切れされて親の方も攻撃されていましたが、それも幾分緩和されたそうです。特に気分を切り替えるヘッドマッサージは効果的のようです。

平成27年12月13日 ロボット時代の創造 高橋智隆氏

北九州イノベーションギャラリー主催でロボットクリエーターの高橋智隆氏を演者にした講演会があったので、小倉駅の北側にある北九州国際会議場に行ってきました。とつとつとしたしゃべりの中にユーモアを交え、時折笑いを取るといった、とてもユニークで面白い講演でした。エンジニア風の大人だけでなく子ども連れの家族や中高生もたくさん聴講していました。 小型の人型ロボットとして2013年初めて宇宙に旅立ったロボットとしてKIROBOの紹介から始まり、パナソニックの電池で動くエボルタ君がグランドキャニオンの崖をロープで登るCM、ルマン24時間耐久レース場で三輪車をこぐエボルタ君が24時間こぎ続けてみごとゴールするシーンが紹介されました。30-40cmの小さなロボットがけなげに動く様は、思わず応援したくなります。会場からもそういう声が漏れていました。 高橋氏とロボットの出会いは子どもの頃に見た鉄腕アトムで、宝塚であった手塚治虫の講演会にも親に誘われて行ったことがあるといいます。しかし、そのままストレートに工学の道に進んだのではなく、進学した立命館大学では産業社会学部で学び趣味であった釣りとスキーを扱っている会社の就職活動をしたそうです。釣りが好きになったのは、滋賀の津市出身で琵琶湖の近くに住んでいたことが影響しているそうです。一次は合格したもののその後不合格となり、挫折を経験。1年発起、河合塾で浪人生を経て京都大学工学部に入学してから、本格的なロボットへの道が始まります。ちなみにその会社が最近、高橋氏にコンタクトを取ってきて社外取締役になってほしいと頼まれたとのこと。社員では断られたのに社外

不登校へのアプローチ 明治学院大学 小野昌彦氏 平成27年

平成27年12月20日(日)は、大分認知行動療法セミナーでの講演を聞きに大分大学医学部に来ました。北九州から電車で1時間少しでした。小倉から大分までの特急電車が遅れたので乗り継ぎのバス乗車も遅れ、開演に少し間に合わなかったのが残念でしたが、とても勉強になりました。 演者の小野先生は、筑波大学の大学院時代の博士課程の小林重雄研究室(通称、コバ研)の先輩でもあります。コバ研は、大きく研究テーマが自閉症と不登校の部門に分かれていて、私は自閉症部門に所属していましたが、臨床経験を積むために不登校部門も出入りしていました。研究室はピラミッド構造になっていたので、私は小野先生から直接指導していただくことはなく、その院生の人たちと一緒にやっていました。 コバ研出身者であるので方法論は、行動療法や行動分析学的アプローチなので、とてもわかりやすい内容でした。私が何よりもありがたいのは、科学的、理論的な裏付けのある方法論を使っているというところだけでなく、臨床的な極意であったり、秘訣であったり、裏話を聞けるところです。こういう所は、臨床アプローチが異なっても共通している部分であり、自分の行動論的な解釈に置きなおして聞いているところでもあります。事例は紹介できないので、そのエッセンスをいくつかを箇条書きで紹介します。 1.不登校とは学校場面からの回避行動 2.臨床家は、最初は嫌われるが学校よりも厳しくあるべき 3.不登校にも、単純回避型、優等生型など様々な型がある   アセスメントをして実態を探り、個別の支援計画を立てて実践することが大切 4.無為な回避行動を強化してはいけない

野生と実験室でのチンパンジー研究を通じて人間の心の進化について理解する

平成27年9月に国際行動分析学会京都大会の招待講演者ということで京都大学霊長類研究所の松沢教授の話を聞きました。京都大学の霊長類研究所は、世界でもトップクラスの霊長類の研究を行っている施設です。主にチンパンジーやボノボを対象とした研究を行っています。普段、私たちは高度に社会化されたソフィストケートされた環境に住んでいるために広く生物の中の1つの種であることを忘れがちですが、今回の発表で我々も類人猿の1種ということを思い出させてくれます。講演後のコーヒーブレイクの時間に、松沢教授に話しかけると気さくに応じてくださいました。 まずは研究手法と飼育環境の変遷について話がありました。昔は実験室での研究が主流ですが、その後、アフリカなど現地での野生の様子を観察するフィールド研究が増え、最近はジャングルの中に狭い広場のようなものを作り、フィールドの中での実験研究などが行われています。サルの野生の状態を観察するフィールド研究は、確か霊長研の今西教授による日本オリジナルの研究手法だと思います。認知発達研究においては、子どもを対象に研究が行われるのですが、昔は子どもと親を離して狭い檻に入れていました。昔の白黒のスライドを見せてくれましたが、何ともおぞましい写真でした。 今は、檻で暮らすということは考えられません。私も20年近く前の大学院生の時に霊長研を見学させてもらったことがありますが、広々とした広場にフィールドアスレチックのような高く登れるような機材が所狭しと並んでいて群れとともに生活しています。これは個体のストレスを減らす倫理的な配慮でもあるし、より自然な状態での個体間、親子間の相互作用を観

物理的構造化の説明を乗る電車を間違えた!? 物理的構造化との絡みで平成27年

今日は、某施設で行う研修の初日。準備万端整え、時間的にも余裕を持って出発したにも関わらず、乗換駅の西小倉駅の1番線から日豊本線で下曽根駅に向かうつもりだった。本を読んでいたが、南小倉、城野と続いて、なかなか下曽根駅に着かない。外の景色は田舎の風景に変わっていて、ふと間違えに気が付いた。降りるとそこは無人駅。スマホのナビで調べると、日田彦山線に乗って別方向に向かっていた。すぐにタクシーでも捕まえて、施設に向かいたかったが、何もない無人駅。すぐに道路まで出て、しばらく行くとバスが通っていたのでひとまず、人通りのある守恒に出て、そこでようやくタクシーを捕まえたのが、研修開始の時間だった。すぐに施設に電話してお詫びを入れ急いで向かったが、夕方の渋滞に巻き込まれて30分遅れでようやく到着した。 今日の研修のテーマは、自閉症スペクトラムの特性と物理的構造化による支援だった。物理的構造化の基本アイディアはこうだ。ある場所で2つ以上の違う活動をすると混乱が起こりやすい。逆にある活動を行う場所を1つに決めると混乱は少なくなる。つまり、活動とそれを行う場所を1対1に決めてしまうといいと言うわけだ。事例で紹介しよう。 ある学校の先生が自閉症の症状の重い中学の生徒を学校の個室で個別指導されているビデオを見せていただいた。先生と勉強している、その生徒が座っていたのがソファで、その部屋には長めのソファしか座れるものが置いていないのだという。 その男子生徒は、時々寝転んだり、のけぞったりしながら勉強を行っていた。そして合間に入る余暇でCDの音楽を聴いていた。先生は、生徒はいつもこんなでどうしたらちゃ

『応用行動分析(ABA)入門講座~明日から試せる効果的なアプローチ方法を学ぶ~』

今日は佐賀県発達障害者支援センター結主催、TEACCHプログラム研究会佐賀支部共催による講演会が佐賀県のみやき町コミュニティセンターでありました。発達障害者の支援にABAの知見を役立てる試みとニーズは日増しに高まっています。元々佐賀は支援学校や福祉施設など県域で自閉症支援が盛んで、構造化による支援や視覚的支援は最も普及している地域の1つだと思います。その中でさらにABAのことを学んで支援に生かそうと考えている人たちがたくさん参加されました。ABAの基本的な枠組みについて話して行動を具体的に理解するにはABC分析(機能分析)が最適だと思ったので、ちょっと難しい内容ではありましたが2時間半の講演でチャレンジしました。そして具体的に支援の計画に役立ててもらうためにABC分析を基にした4つの介入法1行動問題を予防する環境調整、2行動問題に置き換わる行動の支援、3行動問題以外のことに目を向ける他行動の強化、4行動問題自体を弱化・消去する支援を紹介しました。 最後に質問コーナーがありましたが、通常大きな会場ではみんな遠慮して質問が出にくいので主催者の西依さんがトップバッターで質問して他の人が質問しやすい空気を作ってくれました。放課後デイサービスの主催者が「子どもたちが自由に遊んでいる場面で興奮して乱暴を働く子がいるけれども、どのように強化や罰の方法を使ったらよいですか?」という質問がありました。やはり皆さん、介入法としての強化や罰に目が行ってしまうのでしょうか。私は再度「私が説明した方法は個々の介入法として捉えるのではなくABC分析をして行動の原因を明らかにした上で介入法を計画するのですよ

平成27年10月11日福岡県臨床心理士会全体研修会&財団法人設立記念パーティ

実は、福岡に所属を移して10年近くになりますが県士会に参加するのはこれが初めてでした。前職では、とにかく土日がほぼ仕事で埋まっていたので学会や他の研修会に参加するのは年に1回程度でした。しかし、不幸中の幸いと言いますか、今年は6月に前職を退職し、土日に時間が持てるようになったため、学会や研修会の参加ラッシュが続いています。 さて研修会は天神のど真ん中のエルガーラの大きなホールで10時から行われました。さすがに福岡県の心理士会は大きく参加者も数百人はいたでしょうか。最初は、臨床家2人の対談から始まりました。通常は、基調講演という形でスピーチで始まるものなのでしょうが、臨床家2人の緩い対談で始まるというのは、ちょっと意外でした。臨床心理学といっても様々な分派があり、私の臨床の学問基盤は応用行動分析ですから、行動療法に分けられるのかもしれません。今日の対談者は、精神分析家の神田橋條治氏と増井武士氏の2人でした。司会者は高名な先生とうことで紹介を端折っていましたが、恥ずかしながら私は全く知りませんでした。会場の反応や雰囲気では、ほとんどの人にとっては馴染みの先生のようです。 私にとっては、精神分析は遠い昔、大学の研究生で学んだ程度で全くの未知の分野ですし、それから相当の年月が経って変容しているでしょう。2人の対談を聞いていても、基本的な用語や概念などわからないものばかりでした。この経験は私が行動分析学に基づいてセミナーを行う際に、受講者の気持ちを理解するのに役立ちました。何とか我慢して聞いているうちに頭が慣れてきて大まかにつかめるようになりました。お二人とも、具体的なケースにつ

埼玉でのABA講演会

先日の土曜日は埼玉の上尾市で特定非営利活動法人FRONTIER(http://kibou.welfareservice-frontier.org/index.html)主催のABAの講演会に話者として参加しました。前職からの縁で法人代表者の新野さんのご依頼を受け今回の講演に至った経緯があります。埼玉は前職から優秀で個性豊かな支援者の方がおられるのになかなか自閉症支援者の輪が広がらないなと懸念しておりました。今回のことをきっかけに支援の輪が広がってくれることを願っています。 午前中はABAの基本的な考え方と行動の理解を願ってABC分析の話をして午後はABAを支援に応用するABCモデルの話をしました。ABAの概念をわかりやすく伝えるのはいつも苦労しますが、受講者の方からこんなお便りをいただき許可をもらいましたので紹介させていただきます。 先日3/4(土)埼玉県鴻巣市において行われた講演に参加したものです。 私どもにはⒶ等級の広汎性発達障害の子供(支援学校小学部2年)がおります。 未だ発語もなく、意思疎通ができず、先の見えない日々を過ごしておりました。 学校やデイサービスの方との連絡、意思疎通は連絡帳などで取れていたのですが他の子供たちと比べても明らかに遅れがひどく不安ばかりが募っておりました。学校やデイサービスの先生方からは 「穏やかなお子様ですね。きっとおうちの方々が穏やかだからなんですかね」などとよく言われておりました。 私自身教員免許を持っており、多少の知識があったので極力焦らぬよう努めておりましたが具体的に家庭でできる療育はどうすればよいかわからず悶々としておりまし

平成27年8月29日(土)福岡教育連盟主宰 ABCモデル講演会

この日は、福岡教育連盟という教員の方の団体による特別支援教育対象の生徒さんに対するコミュニケーション支援に関する依頼がありました。要望のあったコミュニケーション支援について2時間の講演をしましたが、事前に、ABAの基礎理論について、適切な好子と嫌子の選定について、機能レベルにあった幅広いコミュニケーション支援、校内で支援法を広めるためのコツなどの内容の依頼を受けていましたが、最後の方は時間が足りず、ちょっと残念な講演となりました。 講演終了後、会場のホテルの一室で懇親会がありました。今回の研修の世話係のお一人は中学部の先生で、教科毎に先生が変わってしまうので教員全体に浸透させるのが難しいとおしゃっていました。これは、どこの学校でも同じ課題があると思います。東京のある支援学校では、校長の号令のもと全体で取り組んでいくというトップダウンで進めています。そこで年度初めに校内の教員全員を集めて全体研修を行い、その後コンサルテーションで各教室を回って助言を行うスタイルを取っています。まずABAの基本原理を説明した後にコンサルテーションを行うのが一番効果的な研修スタイルということが研究で実証されています。このようにトップダウンで進めやすい学校環境があるのも、東京では前の前の知事の時代に校長の権限を強めたとう経緯があります。 話は脱線しますが、この知事は比較的、傲慢な態度でマスコミに登場し、マイナスなイメージを持たれている人も多いのではないでしょうか。どうしても間違った政策に対してマスコミが追及し感情的に対応する様子ばかりがニュースになるので、そのようなイメージを持ってしまうのかもしれません

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(同) ABC研究所は、自閉症スペクトラム障害 (ASD) に関する支援法について普及や啓発を行うことを使命にしています。自閉症支援は、応用行動分析 (ABA) とTEACCHプログラムに基づいた科学的方法論を基にしています。ABAは、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の支援についてアメリカ連邦公衆衛生局によって科学的に効果が確認されている方法論として推奨されています。TEACCHは米国ノースカロライナ大学と州政府が中心となって州全体で取り組んでいる自閉症児者の包括的な支援制度で、そこで開発された構造化や視覚的支援などの方法論は世界的な自閉症支援の標準となっています。ABC研究所は、その使命を果たすために、自閉症スペクトラムの支援法に関する研修・セミナー、施設・学校でのコンサルテーション、コミュニケーションや学習教材の研究開発、個別の療育や相談を行っています。

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